夜が明けた。
あなたのいない朝がやってきた。
私はあなたより長年恋焦がれてきた、
心の片隅に居座り続けたあの人からの誘いを優先した。
私のことを誰より理解して好きでいてくれるあなたと、
私を何度も捨てた私の世界の全てだったあの人。
汚い欲だった、愚かな期待だった。
そんなもののために、私はあなたを裏切ってしまった。
私はまた、大切なものを失った。
"えらいね"って"すごいよ"って。
そうやってあなただけはいつも、
私の無謀な夢も先の見えない未来も応援してくれたのに。
どん底にいる私に手を差し伸べて、
望む選択肢も与えてくれて。
そうやって淡白な態度の裏であなたはいつだって、
私を肯定して味方でいてくれたのに。
私の不幸に心を痛めて私のために泣いてくれた人を、
一緒に幸せになろうと誓った人を、
こんなにも簡単に傷つけてしまえた。
好きだったのに。
あなたとの幸せな未来なら簡単に想像できるくらい、
何年話していてもそばにいたいと思えるくらい、
本当に好きだったの。
あなたからの当たり前の愛、当たり前にやってくる明日。
一緒に生きていく未来も当然、やってくるんだと思ってた。
ごめんね、私は泣くべきじゃないね。
弱く愚かでずるい私は、
こうやって失うことでしか気づけなかった。
夜が明けた。
生きていくための希望を失ったのだと、後悔した。
___夜が明けた
好きだよ。
君の一言でこんなにも心が揺れてしまうほど。
君の存在一つで
好きなあの人の思いすら霞んでしまうぐらいに。
今でも、君が手放せないの。
誰にも心変わりすることなどないと確信が持てた。
一生愛し通せる自信があった。
いつだって私の自慢だったのは、君だけだった。
やっぱり私にはできないの。
君を捨てて、他の誰かを一途に愛することだけは。
あの時から、君は私の世界の全てだったから。
___好きだよ
君は私を、どれだけ泣かせれば気が済むの?
君の存在ひとつでどれだけの涙が流れてきたか知ってる?
自分がどれほどの傷をつけてきたのか、
何ひとつ覚えてもいないでしょう。
私の前に何食わぬ顔で現れて、
よくもそんな平然としていられるわね。
不幸になるべきなのは君なのに。
嫌われて然るべきなのは、君の方なのに。
ずるいのよ。
見た目だけで全てが許されて、
その溢れ出る自信で何もかも手にするなんて。
下を向いて生きるべき君が私以外にもてはやされるのは、
本当に気に食わない。
捨てられて、ひとりぼっちになって、
私に泣きついてくるような情けない君でいればいい。
こんな最低な君を好きでいられるのは、
君のその嘘が耐えられるのは、
私だけなんだよ。
___涙
誰もが本当は知っている。
目の前にあるありふれた日常が、小さな幸せであること。
こうして生きていられることが、何より幸福であること。
でもね、人生はそんな簡単じゃない。
だって、人の欲には終わりなどないのだから。
手に入らないものが魅力的なのは常。
比較の世界で生きる私達は、
誰かの不幸なしでは幸せになれない。
平凡であることが最も難しいのは、
私達が羨む先がいつも"平凡な人生"ではないから。
小さな幸せで満足できる人など、ほとんどいないのだから。
可哀想なほど愚かな私達は、
全てを捨ててまで身の丈に合わない大きなものを望む。
この世で最も不幸なことは、
自分が手にしている幸せの質を測り、その数を数えること。
小さな幸せに、感謝すらできないこと。
___小さな幸せ
君はいつもそう。
私が弱っている時を見計らったように突然現れる。
その存在は心の隙間に一瞬で入り込んで、
私の記憶に消えない爪痕を何度も残す。
ねぇ、そんなに私が嫌い?
忘れて欲しいと、そう言ってあの時君が全てを壊したのに。
2年経った今でも、まだ縛り付けておきたい?
私の不幸がよほど好きなのね。
私達は意味のない別れを経験しすぎたの。
"さよなら"すらないそんな曖昧な最後に、触れすぎたのよ。
お願い、もう私から何も奪わないで。
君が私に向ける言葉が、
私にとって全てになってはいけないの。
記憶の中で微笑む君が、私から世界すらも奪ってしまう。
残酷なほどに冷たく、悲しくなるほど突然に。
だって私の世界の全ては君だったから。
永遠を誓った人すら捨ててしまえるほど、
君が魅力的に見えて仕方がないから。
それすら、分かってるんでしょ。
今の君は、きっと私の記憶とはまるで別人なのに。
___記憶