ぱう

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9/8/2024, 3:39:07 AM

踊るように

この桜の木を見ていて思う。
別れの瞬間、最後まで美しくあり続ける桜はすごい、と。 
終わりがあるから美しい、などという言葉を聞いたことがある。
けれど、自分は美しいモノが、最後まで美しくあろうとするから美しいのだと思う。
この踊るように散っていく桜を見てしみじみそう思うのだった。

9/6/2024, 8:13:04 AM

貝殻

あなたは私にとって大切な人。
貴方はそう、例えるなら私にとって貝みたいな人だった。
沢山の色とりどりな貝殻を持っていて、どれも素敵に着こなすの。
でも、貴方はその殻をどれも気に入らなかったみたい。
だから私が引きずり出してあげたの。
「医者の子供」「天才」「一軍」「あの人の彼女」
どの殻も身につけていない貴方には誰も興味を示さなかったね。
当たり前だよ。
だって、綺麗な殻を身につけていない貝なんて価値がないんだもの。
自分から捨てておいて、返してだなんて馬鹿みたい。
貴方を素敵な貝に例えるのなら、私はヤドカリになるのかな。


9/4/2024, 1:05:54 PM

きらめき

僕は、昔から周りのみんなが興味をもつモノに、魅力を感じる事ができなかった。
でも、心配性のお母さんを安心させるために「普通の息子」でいた。
そんな僕の無色な日々に色をつける出来事があったのは、中学二年生の夏休みだ。
その日、僕は家族みんなでおばあちゃんの家に泊まりに行っていた。
僕の住んでいる所に比べ、田舎だったが少し車を走らせればスーパーやコンビニ、ショッピングモールもあった。
父が親戚や友人の家を回っている中、時間を持て余した僕とお母さんはショッピングモールへ行った。
縫い物や野菜、畳などのお店ばかりで正直あまり楽しくはなかった。
お母さんもそろそろ飽きていた様で、近くにいい場所がないかスマホで検索をかけていた。
そんな時、僕の目に色が映った。
古いアンティークな雰囲気のお店。
手作りのドレスを作っている様で、ショーウィンドウにはふりふりの大きなリボンが特徴的なドレスが一つ。
それが僕には宝石の様に輝いて見えた。
車のゲームよりも、怪獣モノのアニメのグッズよりも、ずっとずっとコレが欲しい。
そう思ったのだ。
やっと見つけた僕の「きらめき」
家族には誇って言えるモノではないかもしれないけれど、確かにこの日から僕の人生には色がついたのだ。

9/1/2024, 10:30:43 AM

開かないLINE

元親友と喧嘩をし、二ヶ月が経とうとしていた。
喧嘩をしたタイミングも最悪で、卒業式の三日前。
結局そのまま仲直りする事はなく、彼女は仕事のために地元を出て行った。
今、彼女がどこで何をしているのか分からない。
私に残された連絡手段はLINEのみだった。
あんな喧嘩をしたんだ、既にブロックされているかもしれない。
それでも、「もしかしたら」なんて希望が頭の片隅にあって。
約二ヶ月振りに彼女とのトーク画面を開く。
最後にしたLINEは卒業式の後、遊園地に行こうという内容のものだった。
勿論、遊園地は中止。
全部私のせいだ。
私はLINEに謝罪の文と、今度会えないかとだけ送った。
けれど、二週間経っても返事どころか既読すらつかなかった。
その事実に、改めて自分の罪の重さを知る。
こんなに苦しく、遅い二週間は初めてだ。
もしかしたら、今日こそ返事が来るかも。
なんて有りもしない可能性に期待して、私は昔のトーク画面を見返していた。
その瞬間、だんだんと彼女との思い出が蘇る。
「二ヶ月もかけて、アンタが一番大事だって気づくとか馬鹿みたいだね。」
涙で視界がぼやけていく。
自分勝手なのは分かってる。
自分から突き放しといて、裏切っておいてまた仲良くしたいとか。
でも、せめて「ごめんなさい」の気持ちだけでも、君に届いて欲しい。



9/1/2024, 9:51:18 AM

不完全な僕

佐藤は誰もが認める完璧な学生だった。
勉強も運動も優れており、人間関係も円滑で、どこを見ても欠点らしきものは見当たらない。
周囲からは尊敬され、期待される存在だった。
佐藤自身も常に完璧を目指していたし、周囲からの称賛には満足していた。
けれど、そんな完璧な自分を否定される様な瞬間が度々ある。
その理由は、幼馴染である彰人の存在だった。
運動神経こそ抜群だが、他は平凡。
テストなんていつも赤点ギリギリだ。
僕の方が圧倒的に上で、完璧な僕はあいつにない全てを持っている…はずなのに。
なぜかいつも彰人の周りには人がいて、みんなが選ぶのは彰人だった。
僕は完璧なはずなのに、彰人にないモノ全てを持っているはずなのに。
彰人が持っていて、僕にないモノないて無いはず、そう思っていたのに。
彰人も僕にないナニカを持っていた。
僕はどうしてもコレが許せなくて。
けれど、何となく分かってしまうのだ。
勉強も運動も、人間関係も日々の積み重ねで全て手に入った。
手に入れる方法も知っていた。
でも、どう頑張ってもアレは僕には手に入らない気がするから。
どうしたら、彼の様になれるのだろうか。
今の僕に必要な事。
それを見つけるまで、僕は不完全なままなのかもしれない。

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