【揺れる木陰】
小学生の頃の通学路に友達と下校の
丁度分かれ道の所に大きなどんぐりの木があった
小学生の私達には巨木であるその木は
夏になると濃い緑の葉をざわざわとざわわと
大きく揺らした
木が手を伸ばして揺れているように感じた
その木の下に立っても木漏れ日も通さないほど
葉が生い茂っている
一本でジャングルの怖さみたいな存在で
1人でその木の下に立ちたくなかった
あれから引っ越しして
大人になってその木を見に行った
写真に撮りたかった
「あれ?あんなに小さく葉はスカスカだった?」
小学生の頃に思っていた巨木は全く印象を変えていた
私が大人になっただけじゃなく
あの頃は巨木の全盛期だったのかな?
私は懐かしく会うつもりだった友人が
昔の面影が薄すぎてまるで別人という感情で
その木と私と青空で写真を撮った
【真昼の夢】
いつからだろう
この追われるような怯える感覚は…
怯えてるんじゃなく感覚が微かにするだけ
微かに匂い立った風に揺れる洗濯物と青空
こんな平和な日常に心穏やかにいられなくするのは【真昼の夢】と言う名の非現実空想
ちょっとバイトの入れ過ぎで現実と非現実の境があやふや………そんな事はありはしない
現実の私はシッカリと風邪薬を一瓶開けたと答えられる
どうしても飛びたいのに飛べなくなった私には
真昼の夢なんて可愛らしいは無くて
次にやって来るのはクスリの副作用によるものです
【二人だけの】
二人だけの時間をください
アナタの時間を私にください
写真の角をつなぎ合わせるような
ささやかな人生を送りたいの
【夏】
夏休み中の俺と……俺だと自分は信じてる
アレはイタズラなんかじゃない
心の中で考えていること全部を知っていたじゃないか……
うたた寝したんじゃないか、と言われたら
そうかも知れない、そうであって欲しい
アレが夢なら俺は今、迷っては居ない
0時になった
ラジオのオープニングと同時にチューニングが合わなくなってキュンキュンガガガガツーガガガガ「イ・マ・キ・イ・テ・イ・ル・ノ・ハ…………コウサン、ガガガガガガノ…オレカ……」キューンーガガンガガンンンンン……少し静かになった後「俺は未来の43歳の俺だ……運命を変えてしまってもいいと思っている……もしかして今よりも不幸になるかも知れない……から、高3の俺には申し訳ないけど
今、夏だろ……そう設定されている
まず、第1志望の大学へ行くのはやめて欲しい、お前は理系じゃない……信じられないかも知れないが……理系かも?のレベルだ…文系の勉強はつまらないんだろ?もっと工夫して
文系の大学にしろ………アノ女に出会うキッカケがなければ、こんな事にはならなかった……だから絶対に文系の大学にしろ……
コレは夢ではない…俺の5年分の命と引き換えに過去の俺に話をする権利を買ったんだ、、、頼んだよ…お願いします」
そう言うとラジオはプツンと切れて
直にDJの他愛もない話が流れてきた
こんな事ってあって良いのか?
時計をみたら0時のまま
ほら…夢だよ
でも夢じゃなかったら?
未来の俺は時間を来たときの0時を帰りに合わせて来たんじゃないのか?
どうする俺……
運命はどんな事があっても変えてはいけない
とんでもなく多くの人に影響も大迷惑もかける
それに大学は……やっぱり第1志望に入りたい
するとラジオから大きな声が飛んできた
「何、躊躇して、1人で良い子になってんだよ!俺はまた5年分の命と引き換えに話をしている、合わせて……10年だ…分かるか?俺は本気だ!」
高3の俺ほやっと言い返した
「分かるよ……43歳のオッサンの俺
あんた………めっちゃギャンブラーになってるんだな
俺が言う事を聞く事に賭けて10年分の命を賭けたんだろ?
そんなに返せない程のギャンブルに負けたのかよ
大人なら自分でな・ん・と・か・しろよッ
がんばれオッサンの俺」
【隠された真実】
奈々はお昼寝させている2歳の一人娘の楓の顔を愛おしく見ていた
夏の帰省を利用して祖母の家に遊びに来ていた
祖母は奈々の傍らにきて楓を見て「本当に可愛らしいこと」と目を細めた
奈々は楓が主人の健にどこも似ていないことや
親戚の誰にも似てないと言われる度にドキドキと鼓動を速くした
「奈々ちゃんスイカ、食べない?」祖母は奈々にニコリと微笑んで言った
祖母と奈々はスイカを食べながら
「奈々ちゃん、もうボケた老人が話していると思って聞いてね
真実は1つ、この世に置いて行きたいの
あの世へは持って行けない
だってエンマ様に舌を抜かれちゃうと
笑って見せた
奈々ちゃんのお父さんは亡くなったお祖父ちゃんの子供じゃないの、お祖父ちゃんもさぞあの世でびっくりしてるでしょうね、してやられたか!ってねと笑って言う
お祖父ちゃんと結婚前に、お祖母ちゃんは
愛する男性と関係を持ったの
一度で良いからって、思い残すことなく
結婚したいからって、親同士が決めた結婚だから自分の意志で何かしておきたかった
そしたらね…昌宏がお腹に宿ったの
お祖母ちゃんは大事に育てたわ
昌宏と奈々ちゃんのお母さんの間には子供が出来なくて…そう奈々ちゃんのお母さんは違う人よ、それでも奈々ちゃんは両親に大事に育てられて来たわよね
昌宏と奈々ちゃんのお母さん浩子さんの間に子供が出来なくて乳児院から可愛い女の子、真美ちゃんと名付けたの、そう真美叔母さん
昌宏と浩子さんは本当によく可愛がったわ
だけど昌宏と真美ちゃんは愛し合うようになった…そこで産まれたのが奈々ちゃんよ
昌宏と真美ちゃんが結婚する話もあったけど
その時だけは浩子さんは人が変わったように
それだけは許さない、自由にさせないと言って
我が子として育てたの
人の生命なんてそんなものよ
深く考えなさんな
奈々ちゃんだけじゃないの
よくあることなのよ
人生なんて【生きてこそ】
普段通り生活していればいいの
祖母は涼しい顔で言った