衒凪

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10/8/2023, 10:31:04 AM

暗澹とした空の下で、今にも崩れそうな建物の上を次から次へと移って行きながら駆けていく。遥か遠い前方では、たった一人の仲間がやけに大きくて目立つマントをたなびかせて走っている。地上の方を見やれば瓦礫が全面に広がっており、現状をまざまざと突きつけられるようだった。
町はずれにあったボロボロの教会に滑り込み、何とか追っ手を振り切る。一旦危機は脱したが、また何時見つかるかも分からないため、例の地下へ戻るまでは長い間休む事も叶わない。かろうじて残っている壁に背をもたれ、少しでも体力を回復させようと試みる。仲間もまた、警戒はしつつも私の隣で壁にもたれかかっている。
ふと窓の外を眺めていると、街はずれのここからは小さな町の全貌が見えた。かつての景色は見る影もなく、今はただ荒廃した様子しか伺えない。一部の建物は崩れ、道路は瓦礫に覆われ足の踏み場もなく、人の気配もまるでない。あるのは、かつてここで行われ、そして今も尚続く戦火の跡だけだった。
そうやって感傷に浸っていると、あの追っ手たちの気配が近くで感じられた。もう休んでいる暇ではなくなった。また命懸けで逃げなければならないが、これも私と残してきた仲間たちの為だ。外へ出て、あるかも分からない希望へと再び走り出すのだ。

[束の間の休息]

10/7/2023, 10:15:29 AM

その晩、私はやけに不安定な状態だったのだろう。あの時は渋々といった形で友人について行ったのだが、やはり承諾すべきではなかったと思っている。少なくとも私にとっては良いものではなかったのだから。ああでも、私が友人に話したことについては、やはり私自身が錯乱していたと言わざるを得ない。引き留めるために少し強引な手を使ったのも良くなかった。ただ、友人はその後私に対し怒るでも諌めるでもなく、私の力の入りすぎた言動をただ受け流して相槌を打つばかりで、私にはそれが幾ばくか嬉しかったものであった。

[力を込めて]

10/7/2023, 5:58:04 AM

暗がりの道を歩き、ふと上を見やると電柱の明かりが点滅していた。この辺りにはこれ一つしかない、点滅する電柱。そうだ、確か、私があの時待ち合わせたのもここではなかったか。もう二度と来ることなどないだろうと思っていたがしかし、奇妙な巡り合わせだとも思った。あの頃からずっと、明かりはチカチカと点滅していたのか。

[過ぎた日を思う]