衒凪

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暗澹とした空の下で、今にも崩れそうな建物の上を次から次へと移って行きながら駆けていく。遥か遠い前方では、たった一人の仲間がやけに大きくて目立つマントをたなびかせて走っている。地上の方を見やれば瓦礫が全面に広がっており、現状をまざまざと突きつけられるようだった。
町はずれにあったボロボロの教会に滑り込み、何とか追っ手を振り切る。一旦危機は脱したが、また何時見つかるかも分からないため、例の地下へ戻るまでは長い間休む事も叶わない。かろうじて残っている壁に背をもたれ、少しでも体力を回復させようと試みる。仲間もまた、警戒はしつつも私の隣で壁にもたれかかっている。
ふと窓の外を眺めていると、街はずれのここからは小さな町の全貌が見えた。かつての景色は見る影もなく、今はただ荒廃した様子しか伺えない。一部の建物は崩れ、道路は瓦礫に覆われ足の踏み場もなく、人の気配もまるでない。あるのは、かつてここで行われ、そして今も尚続く戦火の跡だけだった。
そうやって感傷に浸っていると、あの追っ手たちの気配が近くで感じられた。もう休んでいる暇ではなくなった。また命懸けで逃げなければならないが、これも私と残してきた仲間たちの為だ。外へ出て、あるかも分からない希望へと再び走り出すのだ。

[束の間の休息]

10/8/2023, 10:31:04 AM