「あなたは出来ないから。」
今でも私を呪う言葉だ。
13歳までの記憶や経験でその人間の人格形成が決まるという話を知ったのはつい最近のことだ。
小学四年の頃の担任は、成績至上主義の人間だった。
その頃の私は勉強よりも体育とか図工の方が好きだった。担任から授業中に当てられた時に算数の問題を間違えてしまってから。
私はその先生から「出来ない子」認定される。
同じように「出来ない子」認定されたクラスメイト数名と共に、放課後居残りされられたために。
担任は「お残り6(シックス)」と某アイドルグループをもじって、全クラスメイトに晒し者にした。
算数の代わりにポスターや工作で金賞や銀賞をとっても。私の評価は上がらなかった。
両親の教育方針は、先生の言葉は絶対だと言われていたのもあり。当時の私は全てを鵜呑みにしていた。
「あなたは出来ない子だから」先生にそう言われた。
何も出来ない。どうせ出来ない。無理だ。
両親になんでやる前から諦めてるんだ。とよく言われたが。「どうせ出来ないから」と私は言っていた。
ピアノも水泳もやる前から諦めた。
「出来ない子」だからね。私は。
大人になってどうしてこんなに自分に自信が無いのか。自己肯定感が低いのか。原因不明だったけど。
過去を遡れば、原因となったのはそれしか考えられなかった。
大人になってから気がついた、自分がやれば出来る人間側だったことに。それでも自信は生まれない。
確かに私は要領の悪い出来ない子だった。
だから高校も専門学校も出来る限りのことはやった。
専門学校は首席になった。
就職しても誰よりも頑張ってやろうと思った。
ねぇ先生、私の事なんか覚えて無いだろうけど。
9歳の小学生にとんでもない爆弾落としたんだよ。
大人になってわかったよ、勉強も大事だけど。
勉強だけじゃ、社会では何の役にもたたないって。
先生は気遣いや思いやりは皆無だったんですね。
出来ない子と言われた6人の生徒達は
誰よりもずっと努力して、一生懸命生きてる。
仕事に育児に。全身全霊かけてます。
当時の先生と同じ年齢くらいになったけど。
あなたが放った呪いの言葉は今でも心に刻まれてしまっている。
体調が悪い時はネガティブな言葉ばかり考えてる。
いや、体調が悪いわけでもないのかも。
この胃痛の正体はストレスだから。
また長い時間をだた拘束されるだけの時間。
誰か助けて、全然つまらん、勉強にもならない。
ただ貴重な時間を無駄にしてる感じ、休みとして休めないこの無駄な待機時間。
合わない。心の底から帰りたいって思った。
やることないなら、帰してくれ。そう思った。
連絡がほしいな。と思っていたところで。
連絡が来ると、ホッとする。
知らない人間ばかりのアウェーな空間に置き去りにされた気分だったから。
何気ない連絡が嬉しかった。
ありがとう!本当にこれは今の私には染みる。
心配してくれる声や、帰ってくれるのを待ってくれる
言葉が嬉しかった。
私もその親友や仲間がそうなった時、手を差し伸べたい。
そんな持ちつ持たれつの関係でいたい。
これからもずっと。
感謝してます。
紅葉する木々の隙間から、差し込むオレンジの光は
少し寒くなってきた夜の第一幕。
紅葉を撮影する人の影が、群舞のようだった。
綺麗な夕日はあっという間に沈んで、
星を連れてやってくる。
何気ない日常風景のはずなのに、疲れた日は夕日が目に染みる。
何で涙が出るのだろう。
頑張ってるはずなのに、報われないこの虚無感は何処からやってくるのだろう。
相談しようと思ったけど親友に愚痴を聞かせたくないと。躊躇して。
溢れる涙を止められない。
4月は転職や就職の季節。
突如決まった一ヶ月の出張にて、ヘルプ要請だからそれなりに忙しいのだろう。そう思っていた。
開始初日にして
「あ、無理だわー」心の中で叫んだ。
そんなに上手くいかないことくらい
頭ではわかっていた。
「暇だ。やることなんか全然ない。」
それなりに忙しい職場にいたのが続いたのもあって、鮪みたいに泳がないと死ぬ回遊魚タイプの社畜社会人は。暇すぎはストレスが溜まる。
「ヘルプなんかいらねーじゃん」
それとも、私が働き過ぎて頭おかしいのかな。
郷に入っては郷に従えと言う。
ここではこれが普通なのだ。
2日目、我慢だ。我慢。
3日目、我慢。我慢しないと。胃薬服用。
それでいい。
あと20日の我慢。
神様が言った。
一つだけ願いが叶うとしたら、何を願いますか?
「過去に戻って、自分の未来を変えたい」
そう答えた。
タイムリープして、この行き詰まった人生をどうにかしたい。
未来を変えても…
「人間性の問題だったら、あなたまた同じように自分より他人を優先しちゃうんじゃない?」
それはあなたの周りの人間が入れ替わるだけで、何も変わらないんじゃないの?
「嫌みなこと言うなよ、神様だろ。前世で生きづらかったから、死んでからは大優勝とかそんな大器晩成嫌だからな。」
「わかってる。わかってるって。でもちゃんといい席用意してあるから。喜ぶがよい。VIP待遇だぞ。」
「これは喜んでいいのか?どうせそんなこと聞いておいて、願いなんか叶える気ないだろ。」
神様は白々しく、目を反らした。
「大丈夫だよ、あなたは今が辛いだけだ。そのうち良くなる。もれなく死後の安泰も確定だ。」
「そのうちっていつだよ。」
「この後直ぐかもしれないし。一週間後かも、1年先かも。そのうちだよそのうち。頑張って。」
「もー頑張れません。」
「そう言っても、頑張るんだから。応援してるからな。」
「はい。はい。」
その一ヶ月後、その知らせはやってきた。
「書いた小説、重版されるってよ。しかもアニメ化も。」
「未来変えなくて良かった。」そう思うのだった。
※たまにはフィクションも。