霜川菜月

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9/10/2025, 12:48:56 PM

Red, Green, Blue


客電が落ち、天井を突き破りそうな黄色い歓声が響き渡る。

私は赤、姉は緑、妹は青を灯す。

どんなに日常が嫌になっても、
ここにくればすべてを真っ白に照らしてくれる。

ありがとう、尊い世界。

9/9/2025, 12:23:29 PM

フィルター


「あんま気にすんな?
おまえの頑張り、俺はちゃんと見てたから」

そう励まされてから、

あの人が笑っても
あの人があくびしても
あの人がくしゃみしても

何をしていても可愛く見えるようになってしまった。

どうやら私の目には、特殊なフィルターがかかってしまったらしい。

9/8/2025, 2:35:17 PM

仲間になれなくて


一人でいることを選んだ

仲間は苦手
一人が好き

でも

この手でよかったらと
ある日私に差し出された冷たい手
冷たくて温かい手

その日から
さみしさを知ってしまったんだ

9/7/2025, 1:07:29 PM

雨と君


僕は焦っていた。
原稿の締め切りが近づいているのに全く文章が浮かんでこない。

しかも気分転換に散歩に出たら突然の雨。
はーあ、ついてない...

「おにいちゃんげんきないの?ママがくれたげんきになるアメあげる!」

店先で雨宿りしていた僕の隣には、いつの間にか、赤いカッパに黄色の長靴を履いた小さな子供が立っていた。

大きなキラキラした目で僕を見つめながら、

「あのね、ないしょだけどね、これからね、にじのたからものをさがしにいくんだっ!」

そう言うと、その子はパッと雨の中に飛び出していってしまった。

「あ、アメありが...行っちゃったな...」

不思議な子だ。ありがとな、“あめ”の妖精さん。

雨...虹...不思議な子供...か...

何か書けそうな気がして、虹のかかった雨上がりの道を、僕は勢いよく駆け出した。

9/6/2025, 11:01:06 AM

誰もいない教室


忘れ物をとりに来ると、音楽室からピアノの音色が聞こえてきた。

扉は開いていて、夕陽のオレンジが廊下にこぼれている。

吸い込まれるように中を覗くと、いつもピアノ伴奏者に選ばれている隣のクラスのあの子だった。

「だ、誰?びっくりしたあ...!幽霊かと思った...」

先生が鍵をかけ忘れたらしく、勝手に入って弾いていたらしい。

「先生には内緒ね」

君と僕以外誰もいない教室で、2人だけの秘密を共有する。

ピアノは弾きたいけど、怖くて扉は閉められなかったんだとはにかむ彼女の横顔が、今日になっても忘れられない。

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