Red, Green, Blue
客電が落ち、天井を突き破りそうな黄色い歓声が響き渡る。
私は赤、姉は緑、妹は青を灯す。
どんなに日常が嫌になっても、
ここにくればすべてを真っ白に照らしてくれる。
ありがとう、尊い世界。
フィルター
「あんま気にすんな?
おまえの頑張り、俺はちゃんと見てたから」
そう励まされてから、
あの人が笑っても
あの人があくびしても
あの人がくしゃみしても
何をしていても可愛く見えるようになってしまった。
どうやら私の目には、特殊なフィルターがかかってしまったらしい。
仲間になれなくて
一人でいることを選んだ
仲間は苦手
一人が好き
でも
この手でよかったらと
ある日私に差し出された冷たい手
冷たくて温かい手
その日から
さみしさを知ってしまったんだ
雨と君
僕は焦っていた。
原稿の締め切りが近づいているのに全く文章が浮かんでこない。
しかも気分転換に散歩に出たら突然の雨。
はーあ、ついてない...
「おにいちゃんげんきないの?ママがくれたげんきになるアメあげる!」
店先で雨宿りしていた僕の隣には、いつの間にか、赤いカッパに黄色の長靴を履いた小さな子供が立っていた。
大きなキラキラした目で僕を見つめながら、
「あのね、ないしょだけどね、これからね、にじのたからものをさがしにいくんだっ!」
そう言うと、その子はパッと雨の中に飛び出していってしまった。
「あ、アメありが...行っちゃったな...」
不思議な子だ。ありがとな、“あめ”の妖精さん。
雨...虹...不思議な子供...か...
何か書けそうな気がして、虹のかかった雨上がりの道を、僕は勢いよく駆け出した。
誰もいない教室
忘れ物をとりに来ると、音楽室からピアノの音色が聞こえてきた。
扉は開いていて、夕陽のオレンジが廊下にこぼれている。
吸い込まれるように中を覗くと、いつもピアノ伴奏者に選ばれている隣のクラスのあの子だった。
「だ、誰?びっくりしたあ...!幽霊かと思った...」
先生が鍵をかけ忘れたらしく、勝手に入って弾いていたらしい。
「先生には内緒ね」
君と僕以外誰もいない教室で、2人だけの秘密を共有する。
ピアノは弾きたいけど、怖くて扉は閉められなかったんだとはにかむ彼女の横顔が、今日になっても忘れられない。