霜川菜月

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雨と君


僕は焦っていた。
原稿の締め切りが近づいているのに全く文章が浮かんでこない。

しかも気分転換に散歩に出たら突然の雨。
はーあ、ついてない...

「おにいちゃんげんきないの?ママがくれたげんきになるアメあげる!」

店先で雨宿りしていた僕の隣には、いつの間にか、赤いカッパに黄色の長靴を履いた小さな子供が立っていた。

大きなキラキラした目で僕を見つめながら、

「あのね、ないしょだけどね、これからね、にじのたからものをさがしにいくんだっ!」

そう言うと、その子はパッと雨の中に飛び出していってしまった。

「あ、アメありが...行っちゃったな...」

不思議な子だ。ありがとな、“あめ”の妖精さん。

雨...虹...不思議な子供...か...

何か書けそうな気がして、虹のかかった雨上がりの道を、僕は勢いよく駆け出した。

9/7/2025, 1:07:29 PM