誰もいない教室
忘れ物をとりに来ると、音楽室からピアノの音色が聞こえてきた。
扉は開いていて、夕陽のオレンジが廊下にこぼれている。
吸い込まれるように中を覗くと、いつもピアノ伴奏者に選ばれている隣のクラスのあの子だった。
「だ、誰?びっくりしたあ...!幽霊かと思った...」
先生が鍵をかけ忘れたらしく、勝手に入って弾いていたらしい。
「先生には内緒ね」
君と僕以外誰もいない教室で、2人だけの秘密を共有する。
ピアノは弾きたいけど、怖くて扉は閉められなかったんだとはにかむ彼女の横顔が、今日になっても忘れられない。
9/6/2025, 11:01:06 AM