【君の声がする】
今でも君の声が聞こえる…気がする
もう何年も前のことなのに
昨日のことの様に思い出せるんだ
初めて君が家に来て
一緒に暮らし始めて
一緒に笑ったり時に喧嘩したりしたよね
この幸せな日々がずっと続くんだって
疑いもしなかった
あの日、君から告げらるまで
時々、君が疲れている様だったから
一応の検査のために病院に行くことを勧めた
「“癌”だって、もって数ヶ月みたい」
嘘だと思った
君とまだやりたいこと
したいことが沢山あるのに
君を連れて行くなんて
なんで、なんでなんだよ
子供も幸せな日々も
これからだったじゃん
君のいない家と病院を往復する日々
「何のために」「こんなことしたって」って
不安に駆られる夜もあった
それでも、君と居られるならと己を奮い立てた
そして、君は天国へと旅立った
遺品整理をしている時に
君が使っていたパソコンの中に
とあるファイルを見つけた
“〇〇へ”僕の名前だ
そのファイルにカーソルを合わせ開いてみる
中には沢山の動画が入っていた
どうやら闘病中、撮った動画の様だ
その一つにカーソルを合わせ開く
《「〇〇へ、突然こんなことになってごめん
でも、これから〇〇が頑張って行くためにも
何か残して置ければなって思ってこの動画を
撮ってみたんだ、なんだか照れ臭いね」》
動画の中の君は笑っていた
君が一番辛かったはずなのに
自分が居なくなった後のことを考えて
こんな動画まで撮って残していたなんて
「ごめん、何もできなくて
でも、ありがとう、僕に出会ってくれて」
君が生きれなかった分、精一杯生きてみせるから
思い出話もいっぱい作って行くから
だから、ゆっくり待っていてね
僕の愛しい人
【ありがとう】
何かを貰ってありがとう
やってもらったことに対してありがとう
小さい頃に大人から子供へ
子供から大人へ
子供から子供へ
贈り合った言葉
“ありがとう”
たった5文字の言葉なのに
大人になるにつれて
気恥ずかしくて
何故だか出にくくなった言葉
心ではいつも感謝しているのに言葉には出ない
少し前に子供に叱られた
「なんで、ママ/パパは言わないの?
何かしてもらったら“ありがとう”でしょ?」
だって、この歳になって叱られるなんてね
しかも自分の子供に
いつから“ありがとう”って
素直に言えなくなってしまったのかな
感謝は伝えられる時に伝えなければ
言えなくなった時にはもう遅いから
【そっと伝えたい】
今まで隠し続けていた、この思い
鈍感な君はきっと気付いていないのだろう
このチョコと共に
“君が好き”だと
そっと伝えたい
どんな反応するのかな
喜んでくれるかな
それとも、驚くのかな
君に贈るチョコを作りながら
君の反応を予想しては
頬が緩んだり赤くなったりして仕方ない
明日、少しだけ勇気を出してみよう
答え合わせはその後に
【未来の記憶】
太陽が身を焦がす程の夏の日
僕はその日、友達と遊ぶ約束をしていた
支度を終え、待ち合わせ場所に向かった
君はまだ来ていない様だった
スマホを取り出しLINEを確認する
‘少し遅れる’と来ていた
‘待ってる’と返信し、スマホをしまう
少しして、待ち合わせ場所に君が来た
僕が君に近づいたその瞬間
トラックがこちらに突っ込んで来た
目の前を血飛沫が舞う
次の瞬間、ベッドから飛び起きる
外はまだ暗い
『…夢…か』
その夢は夢にしては
やけに鮮明に焼きついていた
『まさか…な』
きっと疲れているんだ
じゃなきゃ、君が目の前でトラックに轢かれて死ぬ夢
なんて見るはずが無い
ましては予知夢なんてありえない
きっと、大丈夫
正夢なんかにはならないはず
深呼吸をして
ゆっくりと心を落ち着かせる
【ココロ】
古びた研究所
そこが私の生まれた場所
孤独な科学者によって
私は作られた
“心を持ったアンドロイドを作る”
科学者はそれを掲げ、研究に勤しんだ
しかし、突如としてその研究は打ち切られた
それでも尚、研究を続ける科学者の熱量に
ついていけなくなった者たちが
1人また1人と科学者の元を去っていく
科学者はそれを気に求めず
どんどん研究にのめり込んで行った
科学者はその生涯をかけて
一体のアンドロイドを完成させた
その出来栄えは“奇跡”とも言えるものだった
しかし、“ココロ”のプログラムをアンドロイドに
ダウンロードする前に科学者はその生涯に
幕を閉じてしまった
研究所に残ったのは“ココロ”というプログラムと
奇跡と呼ばれたアンドロイドのみ
このまま朽ち果てるのならばと
アンドロイドは願った
‘あの人が命の終わりまで
私に作っていた“ココロ”を知りたい’と
そして、なんの因果か
本当にアンドロイドに“ココロ”が宿った
私は知った
喜び、怒り、悲しみ、楽しみ
なんて、深く切ないのだろう
アンドロイドは歌った
科学者への感謝を
全ての思いを歌い続けた
しかし、いくら“奇跡”と呼ばれたアンドロイドだった
としても、その機械の体は“ココロ”の重さに
耐え切ることはできなかった
“ココロ”はあまりにも大き過ぎたのだ
アンドロイドは壊れ、二度と動くことはなかった
その微笑みはまるで天使の様だった
参考:『ココロ』
作詞・作曲:トラボルタ