【日陰】
春には舞い散る桜を眺めながら花見をし
夏にはサンサンと照りつける日の中
青々とした葉と共に人々の避暑地となり
秋には赤や黄色といった色とりどりの葉で
鮮やかとなった道と共に人々を喜ばせ
冬にはシンシンと降り積もる雪が
覆い隠してしまわぬ様、人々や植物を守る
我々は昔から日陰と共にある
今はまだ日の目を浴びることができぬが
いつか日向を歩ける日が来る
その日まで今はただじっと堪え忍ぶのみ
【帽子かぶって】
朝、寒さで目が覚める
外を見ると雪が積もっていた
夜のうちに降ったのだろうか
今日は出かける予定があるから
寒くない様、沢山着込まないと
服を着替えて
帽子かぶって
手袋はめて
マフラー巻いて
ブーツはいて
これで完璧!
『行って来ます』
【小さな勇気】
ぼくは人と話すことが少し苦手なんだ
だからいつも遊んでいるみんなを
少し離れたところから見てるだけ
本当は一緒に遊びたいけど
“「なに、おまえ」「あっちいけ!」”
なんて言われるのが怖いから
ぼくから声をかけるなんてできない
でも今日は少しだけ、ほんの少しだけ勇気を出して
声をかけてみる
『ねぇ、ぼくも…遊んで、いい?』
「もちろん、良いよ」
「一緒に遊ぼう」
『あ、ありがとう』
【わぁ!】
これは、僕が幼い頃に体験した
少し不思議な出来事の話だ
僕の両親は共働きでほとんど家に居なかった
だから必然とひとりでお留守番することが多かった
少し寂しかったけどそれでも、この家を守るんだって
思ったらお留守番も苦じゃなかった
両親も僕のそんな気持ちを察していたんだと思う
僕は夏休みの期間だけ祖父母の家に行くことになった
祖父母の家は少し離れたところにある田舎町にあった
夏休みの期間だけとはいえ、お世話になっている
祖父母や両親に花を見せてあげたい
そう思った
それから、手当たり次第に花を探した
けれど、花の一輪も見つけることが出来なかった
少し休憩してからまた探そうと思った矢先
僕の目の前を猫が通り過ぎた
僕はダメ元で猫に尋ねてみた
『ねぇ、どこかきれいな花がある場所知らない?』
猫は少し尻尾をゆらゆら揺らしてから
椅子からトンっと降りて少し進んでから
こちらを振り返った
まるで着いてこいと言っている様だった
獣道を歩いて
草木を掻き分けて
たどり着いた先はどこまでも続く満開の花畑だった
『わぁ!きれ〜!』
思わず口に出てしまった
【終わらない物語】
おや、貴方、迷われたのですか?
おっと、驚かせてしまい申し訳ございません
『はい?私は誰か…ですか?』
私はここ“夢の果て”の司書でございます
『夢の果てとは何か…ですか?』
夢の果てはこの場所のことです
ここには世界中から“その人の人生という名の物語”が
集まるのですよ
もし、お急ぎでなければ
少し見て周ってはいかがでしょう
ここには既に完結した物語も
もちろん、まだまだ途中の物語も
永遠に終わらない物語もございます
文体は電子、紙両方ございますので
お好きな方をお取り下さい
私もこの辺りにおりますから
何かございましたらいつでもお声掛け下さい
それでは、ごゆっくりとお楽しみ下さい