【とりとめもない話】
これは終わりのない話
“人生”という名の物語の話
自伝を出版する人もいる
でも、それはその人の人生の
一部を書き記したに過ぎない
“人生”という物語は
その人が産まれてから死ぬその瞬間まで
書き記されたものだ
だからこそ、その人が死ぬその時まで
とりもめもなく続くのだ
きっと、その人その人に
その人だけの“人生”という名の物語がある
そして、死んだ時に
初めて読むことが出来る物語になるだろう
その時に少しでも後悔しない様に
これから先を書き記していきたい
【風邪】
朝、目が覚める
喉がイガイガして咳き込む
「風邪でも引いたかな?」
でも、この程度で
学校を会社を休む訳にはいかない
マスクをして
なんとか、学校に会社に行く
だんだん咳が止まらなくなるし
鼻水も出てくる
心做しか熱も出て来た気がする
ここまでくると
本当に風邪なのだと実感して来る
家に帰ったら
胃腸に優しいものを食べて
しっかり薬を飲んで
暖かくして寝よう
【雪を待つ】
「明日は雪、降るかな?」
これは、そんな言葉で始まる
君との思い出の話だ
初めて会った時から
君はどこか
普通とは違った子だった
家事も勉強も
なんでもそっなく子だった
ただ、普通とは少しズレた様だった
可愛いものよりかっこいいものが好きで
映えるものよりガッツリしたものが好きで
甘いものより辛いものの方が好きで
異性より同性の方が好き
そんな子だった
でも、そんな君だからこそ
君のことをもっと知りたいと思った
一緒に買い物に行って
一緒に映画を観て
一緒に思いっきり遊んで
同じ時を過ごして
少しずつ君のことを知っていった
さらに時を重ねて
少しずつ君のことが分からなくなっていった
それでも、一緒に過ごした君は君でしかなくて
一緒にイルミネーションを見に行く約束もした
「ねぇ、明日は雪、降るかな?」
君はそんな問いかけを私にする
「どうだろうね、今夜の天気次第かな?」
「じゃあ、沢山お願いしないとね
“明日、雪が降りますように”って」
「どうして、そんなに雪が降って欲しいの?」
「だって、雪合戦したいし
かまくらと雪だるまも作りたいし
何より、明日はクリスマスだからね」
「叶うと良いね」
「うん!明日の朝、楽しみだなぁ」
「天気、今日一日晴れだって」
「そんなぁ、ホワイトクリスマスは?」
「イルミネーションで我慢するしかないね」
「雪が降る中のイルミネーション
楽しみだったのになぁ」
「仕方ないよ、天気は変えられないしね
それともイルミネーション行くの止める?」
「それはやだ、イルミネーションは絶対行く」
「じゃあ、準備しよ」
「分かった」
君と…ユキと待ち合わせをする
ユキはまだ来ない
ユキからメールが来た
“ごめん、もう少し、かかりそう”
メールにはそう書いてあった
“大丈夫だよ、気をつけて来てね”
私もそう返す
街灯の下、雪(雪/ユキ)を待つ
【イルミネーション】
個人として
市町村として
街のあちこちに光が灯る
この季節
家族と
友達と
恋人と
出かけたくなる
この季節
貴方は誰と見に行きますか?
【愛を注いで】
僕には“愛”が分からない
僕には父親が居た
母親は僕を産んですぐ亡くなったらしい
父さんは母さんのことが好きだったらしい
そのことで、父さんには
「お前が居なければ!」
なんて言われたこともある
それでも、この歳まで育ててくれた
父さんには感謝しているつもりだ
ある日、父さんが若い女性を連れてきた
そこで、父さんが再婚することを知った
僕としても、苦労させた分
父さんが幸せになるならそれでいいと思った
再婚して、しばらくした後
再婚相手との間に命が宿った
父さんも、それはそれは喜んだ
僕も妹ができるんだと
お兄ちゃんになるんだと喜んだ
でも、妹が産まれてからというもの
僕は両親に居ないものとして扱われる様になった
それでも、産まれた子に罪はない
と自分に言い聞かせた
僕がこの家を追い出される、その時までは
「はぁ⁉︎出ていけ⁉︎なんで⁉︎」
「お前はもういい大人だろ、
あの子にはお金がかかるんだ
家族を思うなら出ていってくれ!」
「俺、まだ、高校生だぞ!」
「あの子のためだ!出ていけ!」
「チッ、分かったよ!出てってやるよ!」
父さんとの会話はそれが最後だった
それから、僕は奨学金を借りて
友達と遊ぶ時間を削り
勉強する時間を削り
学校生活とバイトに明け暮れた
やっと、奨学金を返し終わった頃には
僕はもう、大人になっていた
これからは、自分のために生きていこう
ペットを飼った
ペットショップで売れ残ってしまい
成犬となってしまった
ジャーマンシェパードの男の子だ
初めは「初めてで大型犬は…」と思っていたが
ペットショップに行くたび、こちらに笑いかける
そんな姿を見ていたからか
“この子となら僕は愛を見つけられる”
そんな気がした
今では僕の家族で、良き理解者だ
愛を知らない僕が
愛情を注いで
この先も共に生きていきたい
そんな心の友を見つけた
そんな瞬間だ