【愛を注いで】
僕には“愛”が分からない
僕には父親が居た
母親は僕を産んですぐ亡くなったらしい
父さんは母さんのことが好きだったらしい
そのことで、父さんには
「お前が居なければ!」
なんて言われたこともある
それでも、この歳まで育ててくれた
父さんには感謝しているつもりだ
ある日、父さんが若い女性を連れてきた
そこで、父さんが再婚することを知った
僕としても、苦労させた分
父さんが幸せになるならそれでいいと思った
再婚して、しばらくした後
再婚相手との間に命が宿った
父さんも、それはそれは喜んだ
僕も妹ができるんだと
お兄ちゃんになるんだと喜んだ
でも、妹が産まれてからというもの
僕は両親に居ないものとして扱われる様になった
それでも、産まれた子に罪はない
と自分に言い聞かせた
僕がこの家を追い出される、その時までは
「はぁ⁉︎出ていけ⁉︎なんで⁉︎」
「お前はもういい大人だろ、
あの子にはお金がかかるんだ
家族を思うなら出ていってくれ!」
「俺、まだ、高校生だぞ!」
「あの子のためだ!出ていけ!」
「チッ、分かったよ!出てってやるよ!」
父さんとの会話はそれが最後だった
それから、僕は奨学金を借りて
友達と遊ぶ時間を削り
勉強する時間を削り
学校生活とバイトに明け暮れた
やっと、奨学金を返し終わった頃には
僕はもう、大人になっていた
これからは、自分のために生きていこう
ペットを飼った
ペットショップで売れ残ってしまい
成犬となってしまった
ジャーマンシェパードの男の子だ
初めは「初めてで大型犬は…」と思っていたが
ペットショップに行くたび、こちらに笑いかける
そんな姿を見ていたからか
“この子となら僕は愛を見つけられる”
そんな気がした
今では僕の家族で、良き理解者だ
愛を知らない僕が
愛情を注いで
この先も共に生きていきたい
そんな心の友を見つけた
そんな瞬間だ
12/13/2024, 11:10:07 AM