口を開けばみんな各々言いたいことを話す
教室なんてもろにそうだ
まるで合奏を聞いているかのように
ガチャガチャとザワザワと
一見うるさいはずなのに
合わさると自然に調和している
その中でも一際大きく響いてくるメロディーがある
気になっているあなたの声が
他の人より少し小さくて高いあなたの声が
僕にはきちんと聞こえてくる
間接的じゃなくて直接聞ける日を
待ちわびながら5時間の準備をした
特別な人やものに対しての『好き』を生涯で
どのくらい言うのだろう
私は目の前にいる人に対して言うことが苦手だから
とても少ないんじゃないかと思う
おまけに恋人がほしいという願望がないから
ほぼ無いに等しいのは確実だろう
1度くらいは言ってみたいし言われてみたい
それ以前の問題が山積みなのは置いといて...
どこかのアイドルではないけれど
愛する人を見つけられたら
「あぁやっと言えた」と思うのだろう
私の限りなく少ない𝐼 𝑙𝑜𝑣𝑒 𝑦𝑜𝑢には
特別な意味と気持ちが込められてるんだと思う
クラスの人達が嫌いだ
陽キャだとか陰キャだとかは置いといて
生理的に何故か受け付けられない
なんでこの学校を選んでしまったんだ
最近はこう思うようになってしまった
上から3番目の進学校だが
私の成績なら1番は無理でも2番目には余裕で入れた
今更こんなことを言っても
仕方がないのはわかっている
この人達と同じようなレベルに
人の悪口を容易に言えてしまうような幼稚さに
染まりたくないとだけ
ただそれだけの感情が湧いてくるばかりだ
私みたいなのでも褒められてしまう
私のことを賢いと言ってくる人達が沢山いる
こんな非現実的な現実で脳が混乱しそうだ
だけど外面だけはいいから
ニコニコと屈託のない笑みをうかべて
今日もこのドロドロと腐った感情が
心を蝕んで行くのだろう
この心の一縷の純白さを確かめるように
雨の音が窓越しに響いていた
4月から高校生になった
周りの環境や友達がガラリと変わった
今までの環境が特殊だったのもあるだろうけど
全体的に周りのレベルが下がった気がする
教科書を見ても何一つ頭に入っていなかったり
自分で考えようともせずに質問してきたり
挙句の果てにちょっと浮いてる頭のいい子のことを
コソコソ言ってる人達までいる
本当に気持ち悪く感じてしまう
この人たちと同じに見られてしまうんだという
劣等感に似たものを感じてしまう
でも周りからの好感度は段々と上がっていく
それに反して自己肯定感はどんどん下がっていく
自分のことを好きになれるように
色んなことを前向きに捉えてみようと思う
こんな人間関係に真剣に悩んでる私は
誰よりも必死で美しい
『昨夜20時頃に〇〇市の住宅街で通り魔が』
プツン
最近のニュースは近所で起こってる
通り魔事件て持ち切りだ
いい加減このニュースやめてくれよ
という気持ちでテレビの電源をきる
やっべ親友と一緒に登校する約束してたんだった
急いで準備して家を出る
「朝のニュース見た?最近あればっかりだよな」
こいつも同じことを思ったらしい
「ほんとそうだよな警察は何してるんだろ笑」
この市で起きている事件だから
本来このように談笑している場合では無いのだろう
でも朝くらいはそんなことを忘れて話させてほしい
「お前今日塾行く?」
今日は自習だから塾に行かなくてもいいのだが...
「テスト近いし行こうかな」
「まじ?じゃあ一緒に帰ろうぜ」
そんな約束をして
放課後になった
塾に行くまでの道で他愛のない話をする
部活の後だから外は暗かった
この後通り魔に襲われるなんて思ってなさそうな
親友を横目に俺は鞄に手を伸ばした
グサッ
腹の少し上の辺りに何かが刺さった感覚があった
呆気にとられたから痛みは感じなかった
ワイシャツが赤く染まっていく
ドクンッドクンッ
やけに鼓動が大きく聞こえる
「お前が...お前が通り魔なのか?」
友達が俺の事を刺したであろう人物に尋ねた
そんなこと聞いてるうちに刺されるぞお前
と思ったのもつかの間俺のことを刺したやつは言った
「そうだ俺が今までの通り魔の犯人だ」
「お前っ...こいつが何をしたって言うんだよ」
友が叫ぶ
朦朧とした思考で思った
(こいつは誰だ?今までの通り魔事件の犯人は俺なのに...もしかして俺の起こした事件だと思っていたあのニュースはこいつの起こした事件だったのか?)
4分間の沈黙を経て俺は眠りについた
「死んだか?」
友の生死を確認する
無事に息の根は止まったようだ
オレのことを親友と呼ぶこいつを刺した人物が問う
「なんでこいつが通り魔事件の犯人だってわかったんだ?」
なんでわかったかって?愚問だな
「だってこいつ俺が見ていることに気づかずに毎日塾の帰りに殺ってるんだ...バカだよなぁ笑」
塾の秀才や天才達が次々に消えて俺は塾内1位になった
結構人数がいる塾だから容易いことでは無い
だからオレもこの順位をキープしたいんだ
学歴厨の親にも怒られねぇしむしろ褒められる
お前には感謝してるよ
塾内の成績をあげるにはこれが1番だもんなぁ?
次はオレの番だとわかっていたから手を打ったまでだ
お前がやったことと同じことをしただけだから
恨むんじゃねぇぞ?
お前とオレは親友だもんなぁ?