失敗した
また...
もう朝日を見ることはないと思っていたのに
ラインの通知がたくさんくる
『おめでとう🎉🎉』
『誕生日おめでとう!また遊ぼうねー💕︎』
などとお祝いが来ていた
「今日誕生日だったのか」
嬉しいのか嬉しくないのか分からなくて
ぐちゃぐちゃになった表情を
朝日が優しく照らしていた
どうしてもどうしても
昨日コンビニで見たメロンパンが食べたい
たまにあるメロンパンを食べたい衝動が
抑えきれずに放課後にコンビニへ直行する
また太りそうとか一瞬思ったけど
メロンパンはとても美味しかった
ピッピッピッピッ
一定のテンポで機械音が鳴る
この部屋には目覚めない彼と私しか居ない
早く目が覚めてくれないかと
何事もなかったかのように笑いかけてくれないかと
優しい声で名前を呼んでくれないかと
彼が事故にあった半年前から
ずっとずっと待っている
ピッピッピッピッ
ピーーーー
異常な音に気がつくのに時間がかかった
すぐにナースコールを押して
彼の手を握り名前を叫んだ
彼がいなくなってからの日々は味気ないものだった
前々から書いていた日記を振り返る
涙の跡が数ページにわたって残っていた
今日で日記を書き始めて1年になり
君がいなくなって50日となった
多分今日で日記を書くのは最後になるだろう
5/18 待っててね、すぐにいくから
私はまだ知らない世界を知ることができるから
勉強が好きだ
別にガリ勉ってほど勉強はしていないし
塾にずっといる訳でもない
ただ純粋に知らない世界が気になるだけだ
でも何故か「優等生」という枠に
いつもいつもはまってしまう
だからひとりぼっちになりがちなんだ...
誰が悪い訳でもないのに私はつらい
そんな事を考えていた私に話しかけてくれた君
今年初めて同じクラスになった君
私とは正反対の性格をしている君
気がついたら色々な人が私に話しかけてくれていた
やっぱり新学期だからかなぁ
友達がたくさんいるということがなかったから嬉しい
まだまだこの世の中には知らないことがあふれている
と実感した
記憶を代償になんでも叶えてくれるお店があるらしい
願いに応じて消える記憶が多くなるとか
お金では買えないものを手に入れることも可能らしい
あくまで噂でしか聞いたことがないから
「らしい」の域を超えないのだけれども...
自分の記憶を代償にするだけで
最愛の人の病気が治るのだとすれば
こんなに良い話はない
深呼吸をして扉を開ける
ギィィィ
「いらっしゃいませ」
レトロ感が漂う洋館の扉をくぐった時
私の人生の歯車が狂いだした音がした