流れ星を見に行こうよ
明日の夜
こっそり家を抜け出して
角のところで待ち合わせて
お気に入りのワンピース
いつものジーパンとTシャツ
自転車に乗って、丘の上までいこう
あの原っぱに 寝転がって
飽きるほど 星をながめよう
次々に流れてくる星屑たちに
すっかり感心してしまうんだ
この夏が永遠につづきますようにって
そっと星に願いをかけてしまうぼくを
どうか赦して
#11 【終点】
電車に乗ったら、終点までいこうよ
改札を出なければ大丈夫
誰もいない駅のホームでくちづけてね
#10 【つまらないことでも】
携帯電話を充電器に挿したまま
あの人の話を 何時間でも聞いていた
自分には全然わからない話なのに
あの人は一生懸命話し続ける
長話を聞いている間だけはあの人は
私のものだったから
三日月が東からのぼってきて
やがて西の空に沈んでしまうまで
本当に何時間でも
あの人の話を聞いていたんだ
ただただ、好きな人が
嬉しそうにしている事が 幸せだった
様々な状況にある人たちの
それぞれの苦悩に関して
「そういうもんだよ、仕方ない」
とか言っちゃえるような人間に
私は なりたくない
#9 【病室】
四角い窓に、淡いグレーのカーテンがかかっている。
窓の外はすぐ隣の病棟だから、見えるのは壁ばかり。心癒される景色などはありもしない。
この部屋にいるのは、明日まで。
もう退院が決まっている。
身体にいくつかの傷が増えたが、体調は良くなった。
長かったような、短かったような入院生活が終わる。
昨日退院していった、向かいのベッドは数時間後には跡形もなく片付けられてしまった。今日このあと、新しい患者さんが入るらしい。
退院しても、まだすぐ社会復帰は出来ないので、しばらくは自宅でリハビリ生活になる。
不安や焦りもあるけれど、とりあえず命は永らえたのだからなんとかやっていこう。
天井の白いポツポツとした穴のデザインを眺めながら、ぼくはふーっと小さくため息をついた。