手のひらに注がれた水を
こぼすまい、こぼすまいとしても
指の間から滴り落ちてしまうように
あなたの気持ちをつなぎとめようとしても
私にはもうその力がない
#8 【だから一人でいたい】
よく知らない人や
気の合わない人といるのは疲れる
相手に気を遣って
自分が消耗してしまう
「ごく親しい人」となら、肩肘張らず威張らず、見栄も張らずに本当の自分でいられるけど
そうでない人にはどの顔でいけば、自分が安全なのかがわからなくてとても困る
だから、そんな苦労をするくらいなら
いっそひとりで居たいんだ
#7 【澄んだ瞳】
明るいナッツ色の 君の瞳の中に
ぼくはいつでも ぼく自身をみることができた
あの日
ぼくの腕の中に当たり前のような顔でおさまって
そのまま一通りあたりを観察したあと
こちらを振り返って
チュッとぼくの顔にキスしたね
ぼくは君みたいな子はあんまりタイプじゃなかったのに
あの一瞬ですべて世界が変わってしまった
君みたいに賢くて 美しくて
温かくて 優しい生き物を ぼくは他に知らない
逢いたいよ
いつでもずっと君に逢いたい
あと何日かで 君の誕生日がくるのに
笑ってくれる君がいない
君はいま どこにいるの
どこにいけば 君をもう一度抱きしめられるの
どうすればまた君の匂いを嗅ぐことができるの
答えはみつからない
死は永遠に僕たちを引き離した
ぼくはずっと ずっと この気持ちを抱えたまま生きていくしかない
何度でも熱い涙で頬を濡らすだろう
せめて夢の中だけは
自由に君に逢いたいのに
それすらも叶わない
#6 【嵐が来ようとも】
台風は、上層と下層をまぜっかえして、上がりすぎた海水温を全体的に下げてくれる効果があるから必要なものだと思うけれど
人生における嵐も同じように
人間関係や価値観やなんかをかき混ぜて、めちゃくちゃにして、元あるべき場所に戻すような作用があるんだろうかと考える
経験からいうと、わりとそれは当たっていて
ものすごく疲弊するし傷付くし
色んな嫌な思いをするけれど
結果的に自分にとって大切なものや、守るべきものが本当はなんだったのかを思い出させてくれるイベントなのかもしれない
人は余程気を付けて日々を過ごさないと、気付かないうちにだんだん歪んで、だんだん逸れてしまうものだから。
#5 【祭り】
鳥居の向こうに、ゆらぐ兵児帯。
松の木の影と、屋台の提灯。
下駄が跳ねる石畳。
波紋の下の金魚たち。
お囃子の音色はとぎれることなく、
狐面たちの舞は続く。
芙蓉の花と、和紙の残像。
苔むした石灯篭。
今夜の月は、まだ昇らない。