絆
それは言葉にすると恥ずかしいけど、ふとした時に感じられるもの。
引っ越した後でも連絡を取り合う友人、病気になった時心配してくれる家族。
でもそんなんないからって嘆く人もいるけど、そんなことはない。
このアプリで繋がっている人たちにもあるものも、確かに絆だよ。
いつもはガソスタで洗車するけど、たまには庭で手入れしてやる。
今日はいい天気だし、何より愛車が喜んでそうな気がするからだ。
ホースとブラシを出したら、飼い犬のジョンがおもちゃと間違えて近寄ってくる。
わ!違うって!危ないから家に居てなさい!
大好きな君に、この歌を届けよう。
ありふれたミュージシャンはそう歌にする。
愛を知らない私は、その行為をとても独り善がりだと思う。
それでも街の人たちはその歌に感動して、思い思いの恋人を思い浮かべるのだ。
バカバカしい。
その電子に焼かれた陳腐な曲が街中に溢れて、今日も私は居心地が悪くなる。
私はそっと逃げるようにその場を離れて、自分のイヤホンを手に取るのだ。
ーーでも、別のものとはいえ何かに共感を求めてる姿は結局同じか。
つくづく自分と人間の性に嫌になりながらも、プレイリストをクリックするのだ。
「今年は、ひな人形出してやれなくてごめんね」
とママはいった。
ママは先月から入院してて、かわりにおばあちゃんが来てるけど、おばあちゃんもパパもすごくいそがしくってもうひなまつりがきてることなんてわすれてたんだ。
「ううん、あたしママが元気なのがいちばんだから。人形なんてなくたっていい」
でもホントはひな人形もほしくて、がっこうで折った折り紙のひな人形をおうちにかざった。
パパもおばあちゃんも、すごいって言ってくれた。
ママ、はやく元気になって、おひなさまいっしょに見よう。
星空が、好きだった。
よく歌で言われる星座や、生まれた月の星座。誰も知らないような星座でさえその由来があり、それにまつわる人々が創り出した御伽話に夢中になっていた。
だけどいつしか大きくなって、私は星空を見上げなくなった。
空にある絵空事じゃなくて、目の前の現実を見るようになった。
だけどふとした時に、いつもの夜空を思い出すときがある。
その時もいつだってあの時と同じ、星空がキラキラと輝いているのだ。
あの時のたった一つの希望は、いつも私たちを見守っている。