初めは、隣にいればそれでいいと思っていた。
キミの笑った姿が見れたらそれで満足だった。
だけど、いつからかそれだけでは足りないと思いはじめてしまった。
だって、キミはボクの物じゃないから。
楽しそうに別の人間のことを話すキミをみる度に、ふとボクの心が陰る。
ホントはそんなキミも丸ごと愛したいけど、許容できない自分がいるし、そんな自分も許せない。
ああ、欲しい。
醜く欲望をさらけ出すボクを許してくれ。
今日はなんだか学校に行きたくなくて、いつもと反対側の電車に揺られてみる。
ああ、やっちゃった。ママや先生になんて言おう……。と後悔しているのも束の間、電車はひたすら遠い街を目指して走る。
コンクリートの溢れる都会を飛び出して、窓の向こうに青い景色が目に入る
「海だ……」
どこまでも広がる雄大な海が、私の心を赦してくれるような気がした。
ボクはひどく疲れていた。
仕事もプライベートもうまくいかず、この世界から逃げ出してしまいそうな衝動を抱え、限界を迎えていた。
……きっと、ボクが居なくなっても誰も困らないだろうな。
そう呟いて、ため息をつきながら下を向いて歩く。もう、どうでもいいや。
ふとしたときに、足元に紙のようなモノがまとわりついた。
誰かの落とし物だろうか。思わず拾うと、それは映画の半券チケットだった。
思わず顔を上げると、目の前には映画館があり、たくさんのポスターが張り巡らされている。
……そういえば、最近は忙しくて映画を見てなかったな。
たまにはこういうのも悪くないな。
ボクはチケットを握りしめ、映画館の入り口へと歩き出した。
静かな夜は、どこかもの寂しくなる。
なるべく忘れようと日々忙しくしていても、ふとした時に別れたキミのことを思い出してしまう。
消そうと思ったけど消せなかったLINEの履歴。
そして通話のボタン。
通じないだろうと分かってはいても、押したい衝動に駆られる。
ああ、こんなやつ、未練たらしい男だと思われても仕方ないよ。
でもキミはこの静かな夜に、何を考えているのだろうか。そればっかりが気になって、眠れないんだ。
嫌なことがあった時は、空がセピア色に見える気がする。
本当は空はみんな同じ色なのに。気持ちとリンクしてるのかな。
今日はもう早く寝て、また青い空を待とう。