noname

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7/31/2024, 2:38:52 PM



ひとりは楽です。だから、1人でいたい。

ひとりは寂しい。だから、ひとりぼっちは嫌だ。

ひとりは楽です。だって、誰にも傷つけられない。

ひとりは寂しい。だって、誰も隣にいてくれない。

ひとりは楽です。しかし、どうしようもなく

ひとりは寂しい。しかし、どうしようもなく


『空白、心地よい』

7/20/2024, 12:23:26 PM

目の前に人っぽい何かがいた。
パッと見同年代の男に見えるが、よく見ると目っぽいのがおでこにもう2つあるし、触れたらひとたまりもなさそうな真っ赤な爪が伸びている。首に口っぽいのもある。てかちょっと溶けてる。
別に襲ってくるってこともなくて、むしろアイツも戸惑っているように見えた。アイツからしたら俺の方がアイツっぽい何かなのだろうか。なんてぼんやり考えていたら首の口が動いた。

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…たぶん、なんか言ったんだと思う。なんだろう。これは、なにか言うべきだろうか。

「こんにちは。そこから話すんだね。」

なんかアイツめっちゃ動揺してる。アイツもこっちの言葉わかってないのか。

あれから数時間が経ったと思う。俺たちはすっかり仲良くなった。ぶっちゃけ何言ってるか分からないけど、楽しく会話できてる。意外と何とかなるもんだ。

「Bt1sm@…これどう?」
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ヤツは驚いておでこの目を見開いた。そっちが動くんだな。

<か、ずま…5vtjndw?&>
「あ、俺の名前。」



『いつもよりかっこよく聞こえたと彼は言う』

7/11/2024, 2:19:57 AM

目が覚めると僕以外の人間がいなくなっていた。
テレビには誰もいないスタジオを映っていて、ラジオは無音とノイズを流し続けている。まるでついこの前まで人がいたかのように。世界は静寂につつまれていた。うるさいのは嫌いだったのに、今は沈黙がとても怖かった。
外に出てみて、少し歩いてみてもやはり誰もいない。誰もいないはずなのに動き続ける電車を見ると、もしかしたら僕がいなくなったのかもしれないと思った。ゲームのバクのように、寝ているときにどこかをすり抜けて来てしまったのだろう。
このままだと困るな、と思った。
今日はあの子の配信があるんだ。こっちじゃきっと映らない。ガタンゴトン、ガタンゴトン。ノイズのない町に音が響く。そういえば今日は電車のゲームだったっけ。ガタンゴトン、ガタンゴトン。流行りの脱出ゲームだ。ガタンゴトン、ガタンゴトン。あのゲームも人がいなかったな。ガタンゴトン、ガタンゴトン。あれ、なんでこんなに音が近いんだろう。ガタンゴトン、ガタンゴトン。なんで僕は線路の上にいるんだろう。



目が覚めると、布団の上だった。テレビには美人なアナウンサーが映っていて、ラジオは饒舌な芸人の声を流している。世界は喧騒に包まれていて、僕の嫌いな世界に違いなかった。
やけに首が痛い、寝違えたみたいだった。

7/1/2024, 1:00:42 PM

窓越しに見えるのは、ビル、車、ビル、踏切、人、たまに犬。みんなするすると流れていく。
いつも見ているはずなのに、なぜだかずっと見ていられる。
窓越しに見える街は、とてもいいものに見える。大きなビルがあったり、いろんな家が並んでいたり、買い物袋をぶら下げた人が歩いていたり、止まっているようで動いている。
窓越しに見ていた街に入ってみる。瞬間、残念なことに、僕は街に馴染んでしまって、つまらなくなってしまった。
窓越しに見えたのは、きっと夢の街。

6/19/2024, 12:32:33 PM

ざあざあ降りしきる雨を見てから、家に傘を置いてきたことを思い出した。ついてない。バスを使えばあまり濡れずに済むだろうか。いや、今日は財布も置いてきたんだ。とことんついてない。
そんなふうに立ち尽くす私に、良ければ一緒に帰ろうかと言ってくれたのは誰よりも優しい君で。私はその言葉に甘えることにした。

「今日の数学のテストどうだった?」
「全然だめだった。知らん式出てきたもん。」
「ほんと?そりゃ大変だ。」

ざあざあ。降りしきる雨は周りの音をかき消して、君と私が切り取られたような気分になる。普段よりこぶし1つ分近くなった距離が妙にくすぐったい。

「…あ、そういえば、家ここら辺って言ってたっけ?道こっちであってる?」
「………あぁ、いやこっちだよ。もう少し先で曲がるんだ。」
「そっか。意外と遠いんだね。せっかくだから送ってくよ。今日は予定もないし。」
「めっちゃ助かる。ほんとありがとう。」

本当はここで曲がるし、その道だと随分な遠回りだ。優しい君、気づいてくれるなよ。
カバンをギュッと引き寄せる。中の折り畳み傘があたってすこし痛かった。

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