noname

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ホームで電車を待つ。
柵がないホームには慣れない。どうにも境界があいまいになって、足が浮ついたように感じられる。
ぽーん、ぽーんと電車が来る知らせが届く。
目の前には線路があって、ぽっかり空いた空間があった。見つめるうちに彼らを埋めなくては、という義務感が湧き上がってくる。
ごお、ごお。風が唸り始める。
私はぐっと足に力を込めて、電車を待った。
ほどなく電車はやってきて、私の目の前は無事に埋まった。
ほっと力を抜くと、ぽーんとまたアナウンスが鳴った。どこかで人身事故が起きたみたいだった。

彼らはきっと埋めてしまったのだろう。そう思いながら私はなにごともなく電車に乗りこんだ。

10/7/2024, 1:28:20 PM