・2『心の灯火』
実家に逃げた。
夫とはもう会いたくない。
実家の母は何も事情を聞かず「いつまでもいていい」と言ってくれた。
その日の夕飯はお刺身や揚げ物、明太子や浅漬や豚汁など私の好きなものばかりが並んだ。
母はもう歳だからあまり作れないけどと言っていたけど嬉しかった。食べながら泣きそうになるのをこらえるのがやっとだった。
食べ終わると自分を少し取り戻せた気がした。
【続く】
・1『開けないLINE』
向こうは既読になんねーなと思ってるだろうか。
何件きてるのか想像したくもない。
でも私はもう決めたのだ。
あなたの言いなりにはならないと
【続く】
・10『不完全な僕』
退職して3週間ほど。今日は日曜日。
もう日曜日なのか、退職してから曜日の感覚がない。
迷いインコのコースイがうちのコかもしれないと、女性から連絡をもらった。動画を撮って送ってみると間違いないという。
その方からも飼っていた時の写真や動画を見せてもらった。
疑いようもなくコースイだった。
良かったね。飼い主さんが見つかって。
コースイちゃんはほんとの名前はキウイちゃんだった。
飼い主さんがおうちに迎えに来てくれるそうなので掃除をしている。
また一人になるけどなんとかやっていくよ、とキウイに言いながら首を掻いてあげた。
きっといなくなったら淋しくなる。わかっているけど仕方ない。
【終わり】
・9『香水』
姪っことお茶をしながら迷いインコの名前を考えた。
姪っこはインコに「名前をいってごらん?」と話しかけていたが当のインコは首を上下に振ってはピィ!ピィ!と気まぐれに鳴くだけだった。
水色の香水瓶のよう、という理由で「コースイちゃん」ということにとりあえずなった。
【続く】
・8『突然の君の訪問。』
雨の中うちのマンションを見上げていたのは中学生になったばかりの姪っこだった。
どうしたのか聞くと
「なんでもない」
という。学校がなじめないのか、
聞こうにも
そもそも自分が仕事を辞めたばかりの人間だ。
まああがってよ
といい
迷いインコの話をして
買ってきたばかりのゲージを組み立てたり
手伝ってもらった
【続く】