・7『雨に佇む』
土曜日。
迷いインコは飼い主が現れるまで預かることにした。
私はこの小さな生き物が死なないように気を使っているつもりだが当のインコはそんなことは考えもせず呑気に過ごしているように思えた。
健康そうで良かった。
買い物の返りに雨に当たった。
雨の中、私の住むマンションを見上げている人物がいて訝しんだ。
【続く】
・6『私の日記帳』
金曜日。
迷いインコは豆苗を置いた本棚の隅で一晩過ごした。私の日記帳を齧られる。認知行動療法のための日記だった。
餌を買いに行く。
帰りに交番に伝えに行く。
少し離れた場所に小鳥も診てくれる動物病院があり、そこでも探している鳥の情報などがあるらしいので行ってみることにする。
なにせ休職中で時間はあるので。
帰ってインコがいなくなっていたらどうしようと少し不安になる。
私はなるべく急いで帰った。
【続く】
・5『向かい合わせ』
いつも自分がご飯を食べるときに使っているローテーブルにインコは止まった。向かい合わせで座ると頭を上下にブンブンと振って楽しそうにしている。
迷いインコは警察に連絡するべきなんだろう……
明日でいいだろうか。餌はどうすればいいのだろう。
とりあえず小皿に水を入れてテーブルに置いてみた。
【続く】
・4『やるせない気持ち』
木曜日。
働かなければ、でも働けない
就職活動なんてできそうにない。
今は休まなければ。
もうこれ以上身動きがとれないのではないかという不安に駆られた。
近所でアルバイトでもはじめようかと考えていると
ベランダにインコらしき鳥がとまっている。
そっと窓を開けるとインコは部屋の中に入ってきた。
【続く】
・3『海へ』
水曜日。
海が見たくなる。これで本当に出かけられるなら
私は鬱じゃない、適応障害でもない。
例えば
犬吠埼に行く。
灯台を眺める。
荒れた海を眺める想像だけした。
家からは出なかった。
昨日の洗濯物を畳めずにぼんやり眺める。
【続く】