山百合

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8/20/2024, 7:30:37 AM

・2『空模様』

次に婚約者の女に湿地に連れて行かれた。
幅の狭い木道を歩く。

湿地帯から沼地になったのか、わからない。
沼が見えてくる。

空模様がどんどんと怪しくなる。
雷が光る。 

【続く】

8/18/2024, 11:30:26 PM

・1『鏡』

私は誰なんでしょう。
真実を映す鏡の前に立ちました。
婚約者の女に引きずられて大きな姿見の前に女と立ちました。
鏡の前に立つとその者の本性が見えるそうです。
そこにはいつも通りの私が映るだけです。

【続く】

8/18/2024, 7:13:07 AM

・6『いつまでも捨てられないもの』

この先このまま平穏に過ごせたらいいと思っていること
結婚したいとか子供が欲しいとか
成し遂げたいことがあるとか
そんなものはなくて
ただ死ねず
世を捨てて生きたい、という思いだけは捨てられず

色んな想いが一瞬にして駆け巡ったが
そのどれも口の端から漏れることなく

「ありがとうございます……いや、ほんとつまんない男です」
とだけ答えた。

ピアノマンの名前をまだ聞いてない

まあいいか

「今度メシでもいきません?」
「飲みましょ」

【終わり】

8/16/2024, 10:46:29 PM

・5『誇らしさ』

「初めてピアノを弾いてるのを見た時、オッサンかと思いました」

「こっちに越してきたばっかりの時かな、頭もヒゲもなんもしてなかったっす」


彼は俺より全然若かった。こっちが地元で一度は上京したけど馴染めず戻ってきたこと、今は子供にピアノを教えていることなどを話してくれた。

でお兄さんは?何してる人ですか

「俺は全然……普通のリーマンでつまらない男ですよ」
と答えた。

彼は「つまんなくなんかないですよ」と言いこちらをハッキリと見た。暗くて表情はよく見えない。が、なぜか
あなたは自分を誇っていいんだ、とでも言っているような気がした。

【続く】

8/15/2024, 12:47:07 PM

・4『夜の海』

時々は海を眺めに来る。自宅から20分ほど歩けば海岸だからだ。特に理由はない。たいていは夜だ。
自販機で飲み物を買おうとすると先客がいた。
自販機の明かりに照らされていたのはあのピアノ弾きの彼だ。
向こうから先に気がつき「あ!?どうもコンバンワ!」
と声をかけられた。咄嗟に「お、おゎ〜」気の抜けた返事をしてしまい「こんばんはー」と言い直した。
「おにーさん、よく来るんですかココ」
「そっすねー」
「夜の海もいいっすよねー」

俺はこのピアノマンの事を知らない。今なら少し聞いてもいいんだろうか?

【続く】

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