山百合

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・5『誇らしさ』

「初めてピアノを弾いてるのを見た時、オッサンかと思いました」

「こっちに越してきたばっかりの時かな、頭もヒゲもなんもしてなかったっす」


彼は俺より全然若かった。こっちが地元で一度は上京したけど馴染めず戻ってきたこと、今は子供にピアノを教えていることなどを話してくれた。

でお兄さんは?何してる人ですか

「俺は全然……普通のリーマンでつまらない男ですよ」
と答えた。

彼は「つまんなくなんかないですよ」と言いこちらをハッキリと見た。暗くて表情はよく見えない。が、なぜか
あなたは自分を誇っていいんだ、とでも言っているような気がした。

【続く】

8/16/2024, 10:46:29 PM