・1『最初から決まってた』
新人発掘オーディションに参加してほしいと言われた。
「ミスコンに参加してもらう感じ。気楽にやってもらえれば!謝礼出るから!」
大学でサークルの先輩にそう誘われた私はとりあえず話を聞くことにした。
なんでもそのオーディションでグランプリを獲るコは最初から決まっているらしいのだが参加人数をもっと増やして箔を付けたいらしい。
先輩に来た案件のおこぼれ。
先輩と一緒なら謝礼も出るならいいかな、と思って引き受けることにした。
【続く】
・5『太陽』
ねえさんを外に連れ出して散歩する。
私はねえさんから寿命を少しずつ頂戴し、若返る。
ねえさんは歳を取り、
以前よりずっと私のねえさんらしくなった。
私は以前のねえさんのような少女の姿になっていく。
体力と知性がある。
「あなた、大丈夫なの?」
まだ、彼女は完全にボケてはいない。
ええ、何が?
「だって吸血鬼は太陽が苦手ってきまってるでしょ」
ええ、ええ、そうですね。
でも私は吸血鬼じゃありませんよ?
「そうなの?ならお散歩できるわねえ」
【終わり】
・4『鐘の音』
朝の鐘の音。
始業の時間だ。
ねえさんはまだ寝ている。
血を抜いて調べる。
変化なし。
この壊れたお人形のような女の子から
ほんの少しだけ生命力と知識と記憶を頂く。
もうかれこれ500年は生きているのだ
そろそろ解放してもいいだろう。
私はねえさんから2年分ほどの生命力を貰った。
肌や髪に少しだけ潤いが戻る気がした。
【続く】
・3『つまらないことでも』
いつもありがとう。何かお礼がしたいわ
「ええ、そんな、いいんですよ」
でも私につきっきりでしょ?
他の患者さんもいるでしょう
なんだか悪いわ
「ええ、ええ、なら姉さんとお呼びしてもいいですか」
そんなことでいいの?
つまらなくない?
「つまらなくないですよ、ねえさん」
【続く】
・2『目が覚めるまでに』
さあ、やりかけの仕事を終えなくちゃ
病室まで付き添ってくれた彼女に資料を頼んでいた。
比較、耐久、価格、重量、メンテナンスのしやすさ、内部の写真、必要人数……
「ええ、ええ、そちらはもう大丈夫ですよ。もう終わってますよ」
終わってたかしら
「ええ、ええ。滞りありません」
もしかして私、忘れてるの
「今日はぐっすりお休みになってください」
目が覚めたら、明日になれば思い出せるかしら
【続く】