山百合

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8/2/2024, 2:32:26 PM

・1『病室』

自分の病室がわからない。

お手洗いに行った。
出たら右?左?

◯◯さん
◯◯さん!


私のことですか?

こっちですよ

私、一人でお手洗いに行ったのよ。


ええ、ええ。それは、もう。

私の病室はどこかしら。

ええ、ええ。それは、もう。こっちですよ。
すぐなんですよ。

【続く】

8/1/2024, 3:08:07 PM

・6『明日、もし晴れたら』

犬をぎゅっとしたまましばらく泣いた。
このこは迷い犬なんだろうか。
「交番に行く?」
答えない
「僕とおばあちゃんちに帰る?」
そうだそうだと言わんばかりに吠える

雨が弱くなってきたので一緒に帰ることにした
でも連れてって大丈夫かな

帰るとおばあちゃんが心配そうに迎えてくれた。
犬を連れ帰ったことは怒られなかったけど
明日動物病院に連れていこうと言われた。
首輪もしてないし、ビョーキとか心配だと。

変な女の人につれさられそうになったことは黙ってた。
もし、僕の予感が正しくて
おばあちゃんに質問して
答え合わせをして、
合ってたら……

タオルにくるんだ犬を拭きながら
心の中とは全然違う言葉を口にした
子供らしい言葉を
「明日晴れたら一緒に散歩しようね」

【終わり】

8/1/2024, 6:22:48 AM

・5『だから、一人でいたい』

何犬かわからない。
でもかわいい。
毛足が濡れている

僕と並走する。
ひとまず雨に濡れないところに。コンビニはだめ
マンションの屋根付きの駐輪場に入った。
「君だれ」と犬に声をかけながらしゃがむと
肩口に顎を乗せて前足をかけてくっつく。
人懐っこいね

変な女の人から解放されて良かった。
誰にも見つかりたくなかった。
急に恐ろしくなってきて
僕は泣いた。
誰かに見つかったらこの犬とはお別れになるんだろうな。
そんな気がした。

【続く】

7/30/2024, 2:16:15 PM

・4『澄んだ瞳』

雨が降る中「帰りたい!」と叫んだ
女の人は困った顔をして
何か言い訳のような事を言っていた。

濡れるから
家は近いから
あぶないし
それなら送っていくから

「知らない人だから嫌だっ」
僕は走ってそこから逃げた。

家に向かったら家がバレるだろうか?
追ってくるだろうか?

すると向こうから犬が走ってきた
僕と目が合う
見つけた!みたいな表情だった
とってもキレイな瞳だった

【続く】

7/29/2024, 3:34:16 PM

・3『嵐が来ようとも』

女の人に手を引かれ屋台の並ぶ通りを歩かされた。
抵抗したが周りも気にしていないし、見ていない。
助けてもらえそうになかった。

泣きそうになった。こわい、帰りたい。

急に女の人は立ち止まって
「はい」
と屋台の焼きそばのパックを渡してきた。
棒の抜かれたボロボロのフランクフルトも乗っていた。

ベンチに座ってとにかく食べた。泣きたかったけど
食べたら解放されると思った。
天気が急に変わって雷が、光った
そのうちに雨がポッポツと大きな雨粒になってきた。

「うちが近いから行こ」と
また引っ張られそうになった。

今嵐が来ても女の人の家に行きたくなかった

【続く】

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