・6『誰にも言えない秘密』
手紙に電話番号はなく仕方なく住所を頼りに
手紙の差出人、『ヤマセ チカ』を尋ねることにした
電車で1時間ほどの元義実家の近くの住所で迷うことはなかった
チカというのは幼馴染かなにかだろうか。
そんな話は元夫から聞いたことがない
義実家宅に連絡を入れるか迷ったが
確かめる勇気がなかった。それに内容証明証が偽りだという確信もあった
この件に義実家は関与していない気がする
そもそももう他人なのだ【義】はない
山瀬の表札を確認してチャイムをならした
60代……いや70代だろうか?
背の高い瘦身の男性が玄関の扉を開けた
「はじめまして。私は岩田カヨと申します。山瀬チカさんはご在宅でしょうか」
男性は驚いた表情を一瞬見せた気がした。
が、すぐに答えた
「私です」
「えっ?」
「私が手紙を送りました」
「何ですって?」
「山瀬親信(ちかのぶ)です
貴方のダンナさんに、私は、私は、ずっと………!!」
【続く】
5・『狭い部屋』
この手紙の差出人が内容証明をでっちあげて送ったのではないか?そもそも本物の内容証明というものを見たことがないのでこれが有効か無効かはわからないが、自分が不倫していたという事実はないのだ
この狭いアパートの一室で慎ましく暮らしているだけなのになぜこうも厄介事が降ってくるのか?カヨはそう思った。
ご丁寧に差出人の住所は記されている
貴方は誰?確かめに行こう
【続く】
・4『失恋』
内容証明証とは別にもう一通手紙がきていた。
とても美しい字で元夫への想いが綴られていた。
4ページに渡るが要約すると
『自分は彼に恋愛感情をずっと抱いていた、しかしその恋は叶わなかった、結婚した貴方が最後まで寄り添うべきだ』
というものだった
【続く】
・3『正直』
内容証明に書かれていることに覚えがなかった
私は病気の夫の介護に疲れていた
義両親の世話も限界だった
この内容証明はどうやって作られたのだろう?
私が不倫していたことになっている
まさかでっちあげ?
正直死にゆく夫を見るのが辛かったんじゃない
死んでくれたら解放されると思ったからだ
【続く】
・2『梅雨』
白無垢もカビるんじゃないかしら
衣装レンタル店で働くカヨは思った。
私には関係のないこと
しかし一人暮らしのアパートに内容証明証が送られてきたことの方が重大だ
別れた夫は死んだと思っていたからだ
【続く】