『踊りませんか?』
ゆっくりとした調子から始まる
私の奏でる演奏に合わせて
貴方はワルツを踊る
軽やかで、まるで精霊のように美しい
けれど、
そんな貴方と踊る相手は私じゃない
私はただ、音を紡ぐだけ
貴方は私の気持ちなど知らずに
他の女性と踊る
嫉妬や妬みではなく、憧れてしまう
貴方と踊ることに
私の演奏に会わせて踊っている貴方は、
まるで操り人形のよう
少しの優越感と、少しの劣等感
嗚呼、
この演奏をやめて、貴方と踊りたかった
叶わぬ願いをのせて響く演奏
一度で良い
私と踊りませんか?
演奏も何もない
――無音のワルツを――
『巡り会えたら』
彼岸花のように、
真っ赤な花が散るように、
僕の視界を君の鮮やかな血が染める
君は、
最後まで笑っていた
君のいない世界なら、
生きていても仕方がない
-―神様、最後のお願いです。
もし、生まれ変わることができるなら
また、彼女に会わせてください
いや、彼女に巡り会えるまで
何度でも―
『奇跡をもう一度』
奇跡ってものがどんなものなのか、
僕には分からない
目に見えないし、曖昧だし、
幸せとかと違って
何だか
本当にあるのかさえ分からない。
もし、
人生が大きく変化するようなこと、
特別で、きらきら輝いているもの
そんなものに出会うことができたことを
奇跡と言うのなら、
僕にとっての奇跡は
君に会えたことだと思う。
そう、伝えたいからさ、
夢じゃなくて、
もう一度だけ会いに来てよ
臆病な僕を
もう一度だけ照してよ
欲張りなのは分かってるけどさ、
もう一度だけ…
君に会うという奇跡を…
『たそがれ』
前を歩く
夕日に照された君の背中は
とても小さく見えた。
今にも消えてしまいそうなほど儚く、
そして、寂しそうだった。
僕は思わず君の手をつかんだ。
そうしていないと
何処かへ
いってしまいそうだったから。
君は、少し驚いた顔をして、すぐに笑った。
その時の、
沈み行く太陽よりも明るい
君の笑顔が
僕は今でも忘れられない
『きっと明日も』
きっと今日も昨日と同じ
何一つ変わらない
普通の
何気ない日になると、信じて疑わなかった。
実際、今日も昨日と変わらない。
ひとつを除いては。
いつも側でみていた
君の笑顔
いつも側で聴いていた
君の声
いつも側にいた
君、
何故だろう
昨日と、なにも変わらないはずなのに
君だけが、どこを探しても見つからない。
「君がいない」
その事以外は何もかも昨日と変わらないのに…
きっと明日も会えると思っていた
あのとき、僕に君を引き留めることができていたら
君の苦しみに、抱えているものに気づけていたら
まだ、君は、
きっと明日も……