特に何も無かった今日、
沈む夕日を眺めながら
昨日まで暖かかった風が
少し冷たいことに気がついた。
髪がなびいて
風と遊んでいる。
肌寒いような冷たい風が
夏はまだ来させまいと
頑張っている。
満開だった桜は
もう強風や雨で散ってしまったけれど、
まだ春だと。
夏はまだまだだと。
風は一生懸命に訴えている。
それに
風が強いせいか
散ってしまった花びらが
下から舞い上がってきては
ひらひらと落ちていく、
まるで花吹雪。
四季の春を
欠けさせないと
地球も地球なりに考えている。
"Good Midnight!"
私は風みたいに
春を連れ戻すことは
できないけれど、
プラスチックをリサイクルし
夏を少しでも遅らせることは
きっとできるはず。
君の目を見つめると
なんだかあの月を思い出す。
田舎の家の縁側で
ただ見つめるだけだった月。
海の見える家の窓で
ただ見つめるだけだった月。
君は本当に
月みたいだ。
真っ黒な毛並みは夜空を、
黄色い目は月を。
にゃあっという鳴き声で
君が猫だと改めて感じれる。
真夜中に私の相手をしてくれるのは
君くらいだよ。
撫でたら暖かい。
目を見たらここが空だってわかる。
真っ暗な部屋の中。
目を閉じればどんな場所へもいける。
"Good Midnight!"
無性に水が飲みたくなる真夜中、
君は寝息を立てて寝ていて
暗闇に紛れて見えやしない。
星空の下で
迷子列車は今日も走る。
4月が辛くて辛くて
地に足を付けたくない人、
夜更かししたいだけで
涙はおまけの人、
そんな人たちが
「夜の鳥」を利用する。
モノレールのように
空を走ってるみたいで
でも列車、しかも迷子列車。
星空の下、
1番星に近い位置で
深夜を愛する
全ての人を乗せて走る。
手を伸ばせば届きそうな星は
月の明かりがあまり届かず、
キラキラと思う存分輝いている。
見てるだけでも綺麗なのに
「星屑パスタ」を読むだけで
何倍も綺麗で儚く、
パスタが食べたくなってくる。
携帯ラジオで聴くのは
もちろん「ミッドナイトラジオ」。
......ジーッ、...ザザッ。
えー、皆さんこんばんは。
ミッドナイトラジオのお時間です。
今夜はかめ座流星群。
ぜひ星屑のお供にお聴き下さい。
迷子列車「夜の鳥」、
迷子船「深海のクジラ」は
本日も問題なく運行中、
星屑の雨のカケラは
依然として希少性が高いようです。
ガタンゴトン、と
列車の静かな走る音と
藍色漂うラジオの音が
夜、真夜中、深夜という時間を
そっと包んでくれる。
おや、かめ座流星群が見えてきましたね。
それでは今夜はここら辺で。
皆さんも良い真夜中を。
"Good Midnight!"
ラジオが終わると
またガタンゴトン、という
列車の音だけになってしまう。
最初はそれでもよかったのに
ラジオが入ってきて出ていった途端、
寂しくなってしまうのは。
フクロウに似た人は言う。
やりたくて雑貨屋を
やってるんじゃないと。
狐に似た人は言う。
おりたくて白雲峠に
おるんやないと。
少女はわからない。
やりたくないなら
やらなきゃいい。
居たくないなら
どこか違う場所へ行けばいい。
何故好きなことをしないのか、
茶髪のネブラスオオカミの
少女には
わからなかった。
白髪の少女、
ネブラスオオカミの長は言う。
1割に入るネブラスオオカミなのだから
いずれ君にもわかると。
それすら何のことかわからない私に、
本当にわかる日が来るのだろうか。
群れの中でも特に理解力が足りず、
よく1匹でいる私に。
月を見上げる度思い出す。
フクロウに似た人の、
狐に似た人の、
長の寂しそうな顔。
何かを思い出すような顔。
何かを諦めたような顔。
1番苦しいのは
私がその顔を見ても
何も出来ないこと。
でもお喋りなカモメは言う。
それでいい。
後ろを振り向かず、
ただ歩いていればと。
"Good Midnight!"
まだ遠くて遠くて
見えやしないけれど、
私もいつの日か
好きなことが出来なくなる。
何かを諦めなければいけなくなる。
嫌でもわかってしまう
その時まで。
1つだけ
世界があって
1人だけ
私がいるのだとしたら、
それってすごく尊くて
儚い命なんじゃないかって思う。
何もかもが1度きりで、
初めてで、感動モノで。
何かがふっと切れたみたいに
見方が変わる。
あ、私別に今これしなくていいやって。
身体が軽くなる。
全てに色がついていく。
電車の音、雨の匂い、
行きつけのケーキ屋さんの
いつもの温度。
肌寒いくらいがちょうどいい風。
五感に感じる全てが
心地いい。
"Good Midnight!"
もし
世界が2つ以上あって
私が2人以上いるのだとしたら、
あっちの世界でも
私がいるから
こっちの私は
このまま普通に。