君が見た景色を
私も見たい、そう思った。
そしたら君は意地悪に笑って
ここへ連れて来たんだ。
そう、バンジー。
ニコニコしながら
いつの間にか私にハーネスを付けてて
もうバンジージャンプするしかない状況に
なってしまっていた。
踏み出す勇気が中々出ない中、
君は私の背中をドンッと押して
普通に泣きながらバンジージャンプをした。
でも、君がなんでここに来たかはわかった。
目を擦って見たのは
透き通る川の水と
峡谷の間を沈んでいく夕日。
幸せで胸が溢れるって
こんな気持ちなのかなぁって。
君が見た景色って
こんなに幸せで
溢れてたんだなぁって。
"Good Midnight!"
今度は私の見た景色を
見せようと思って
君の写真に私が撮った景色の写真を
特等席で見せてあげた。
言葉にならないもの。
喉の奥でつっかえて
出てこないもの。
なんで理由を話せないのって
聞かれても、
どうしても言い表せないもの。
その事で泣かれて
話してと懇願されても
言えないもの。
部屋でひとりぼっち。
頭の中でずっとぐるぐるしてるもの。
不意に現れては私を混乱させるもの。
私を焦らすだけ焦らせて
1人になったら幾らかマシになるもの。
家族や友達によく聞かれてしまうもの。
あー、なんだか、
涙が溢れて止まらないもの。
暗くて痛くてもやもやしてて
辛くてしんどくて無くなって欲しいもの。
"Good Midnight!"
私をどうしても
1人にさせない醜い感情というもの。
暑かったから
家を飛び出して
山の途中にある公園のベンチで
座ってた。
そしたら急に
ポンデリングヘアの人が現れて
私にツナマヨのおにぎりを渡して
隣に座ってきた。
夏って暑いですよね。
その人は
びっくりするぐらい普通に話しかけてきた。
日中も夕方もこう暑いと、
人って自然と夜更かししたくなるんですかね。
最近「夜の鳥」をご利用くださる
お客様が増えてるんです。
突然始まる相談事のような話。
はぁ。
「夜の鳥」は行き先が気まぐれの
迷子列車のことだろう。
初回のお客様には
枕をプレゼントしてるんですが、
その枕が大好評で、
特に硬さが最高の夜更かし枕が
一番の人気なんです。
自慢話だったか…?
はぁ。
でも枕はこちらで作ってるものでして、
人手が足りなくなってきてるんですよ。
そこで、です。
あなた、最近眠れないですよね?
夜更かししようと思ってないのに
布団に入って目を閉じても
2、3時間と起きてしまっていますよね。
その時間、
良ければ枕作りに使いませんか?
求人募集の話だったか。
はぁ。
でもほんとに当たってる。
夜眠れない。
最初は目を瞑る間頑張って耐えた。
けどだんだん怖くなってきた。
眠れない、夢を見るのが怖い、
明日が怖い、布団が怖い。
焦りと恐怖で
毎日生きた心地がしなかった。
丁度いい。
ここじゃないどこかへ
一瞬でも行けるチャンス。
やります、枕作り。
言い終わった直後、
ポンデリングヘアの人の服装は
列車の運転手の制服になっていた。
そして木々しか無かったはずの目の前には
迷子列車、「夜の鳥」が止まっていた。
"Good Midnight!"
導かれて列車に乗り
ここじゃないどこかへ行って
初回のお客様へのプレゼントを
たくさん作った。
そんな真夏の記憶。
半分しか食べてない、
暑さで溶けて
こぼれたアイスクリーム。
もうどうでもいい。
今隕石が降ってきてもいいし、
地震が起きても、
宇宙人がここに降りてきても、
全てどうでもいい。
こんなに毎日必死なのに
神様はまだ足りないようで、
私をドン底から
さらに埋めようとしてくる。
何もかも上手くいかなくて
消えてやろうかと思ったりもする。
なんてつまらない人生。
凄くちっぽけなことで
ドン底だとか、
消えたいだとか言葉を並べて、
自分が1番不幸みたいに思って話して、
こんなことしたら
あとからまた辛くなるのに。
"Good Midnight!"
詰めの甘さがカンストしてて
注意しててもどうにもならない私へ。
やさしさなんて
中途半端で苦しくなるだけ。
ほっといて欲しい時に
やさしさを向けられると
酷く当っちゃって
傷つけちゃって
こっちも傷つく。
でもやさしさが無いと
人は寄ってこないし、
助けてもくれない。
扱いが難しくて、
でも使いこなせると
みんなから慕われて助けてもらえる。
"Good Midnight!"
だから私は
助けてもらいたいがために
今日もやさしさを使いこなせるフリをする。
仮面を被ってにこにこ笑顔。
そしたら人が寄ってくる。