るに

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5/11/2025, 4:42:00 PM

未来への船は
まもなく出港いたします。
お乗りの際は
お足元に隙間や水たまりがございますので、
ご注意ください。
プーーッ。
.......ジーッ、...ザザッ。
皆さん、こんばんは。
本日は未来行きの船、
「深海のクジラ」をご利用くださり
誠にありがとうございます。
こちらの船は、
この先が不安なお客様を乗せ、
夜の海を漂う
寄り添いの船となっております。
行き先は1週間後かもしれませんし、
1ヶ月後かもしれませんので、
迷子船ともいわれております。
皆さんの船内にあるベッドに座って
どうぞごゆっくり
皆さんの未来をお楽しみください。
初めてご利用の方もいらっしゃいますので、
少しだけ等船のことを説明いたします。
まず窓を見ていただきますと
暗い暗い大海原がご覧いただけるかと思います。
これが皆さんの未来です。
真っ暗でどこに何があるのか
さっぱりわかりませんよね?
ご安心ください。
等船に乗っていれば
だんだん朝日が昇ってきて
外が見えるようになります。
しかし日が昇る時間には個人差がございます。
その間はごゆっくりおくつろぎください。
朝日が昇りますと、
外が見えて等船を下船できるようになります。
もちろん船酔いで
今すぐ降りたい!という方が
いらっしゃいましたら、
下船されることも可能でございます。
船の広さは皆さんのご想像次第。
それでは皆さんの未来に光と幸あれ。
Good Midnight!。
...プツンッ。

5/10/2025, 4:08:39 PM

土曜は静かなる森へ。
私の村での暗黙のルール。
毎週土曜にキツネのお面をつけて
森へ行かなければいけない。
2時間ほど散歩して
帰ってくるだけでいいのだけど、
その間キツネのお面は
絶対に外しちゃいけない。
狐に似た人がその森にはいて
村に流れる水を清めてくれたり
よく自然災害から守ってくれる。
でも寂しがり屋で
土曜は特に寂しい日なんだとか。
だからキツネのお面をつけるんだけど、
森に入れるのはお面をつけて
狐に似た人が狐だと思うからで
外したら人間ってことがわかっちゃうから
食べられると。
信じてない人なんか
この村にはいない。
すでに20人以上も食われてるから。
そして私は今
お面を外してしまった。
いや、外されてしまった。
ほーら、やっぱりや。
私こんな子ども騙しに
騙されるわけないんよ!
肉眼で見た狐に似た人は
温厚でとても私を今から食べそうな人には
見えなかった。
私、人は食べへんよ!
誰かが私になりすまして
人食べてるみたいなんよ。
ちょいとお姉さん手伝ってくれへん?
私はどこかで暗黙のルールを
信じていなかったのかもしれない。
想像通りのおっとりとした
真っ赤な着物を着た
本当に狐に似ている人。
いいですよ、と
小さな声で私は答えた。
"Good Midnight!"
最後に見たのは
ありがとさん!と
狐に似た人が笑っている顔だった。
私の背中は食いちぎられ
静かなる森に
真っ赤な血の海が広がっていった。

5/9/2025, 3:32:58 PM

つるっとすすり飲み込んだ
ミートソースパスタ。
ぐるぐるフォークを回して
またパスタを持ち上げて口に運ぶ。
食事と会話は一緒。
話しかけたらフォークを刺してるし、
話しかけられたら答えるために
口を開いて食べる。
あれ?って思って噛み合わなかった時は
飲み込んで隠して会話を続ける。
嫌いな食べ物があっても
飲み込んだらもう私になる。
そうやって蓄積した嫌いな食べ物が
私自身を嫌いにさせる。
目にも髪にも爪にも皮膚にも
あの想像するだけでも吐き気がする
嫌いな食べ物が分解されて
使われてると考えるだけで。
歯に詰まった食べ物は
飲み込みきれなかった引っかかったもの。
放ってほいて
飲み込んでしまえればよかったのに
いやチガウ、向こうがチガウなんて
引っかかっるから。
おえって吐いちゃうのは
本当に考え方が違った時。
どうやっても分かり合えない時だけ。
"Good Midnight!"
いつか歯に詰まることも
吐くこともなくなる。
パスタ以外のものも食べれるようになる。
キットそうなるから、
今はまだオモウママ夢を描け。

5/8/2025, 2:59:04 PM

身長を伸ばしたい?
厚底を履いても足りない?
自販機の1番上が届かない……?
それはもう自分で頑張って
身長伸ばしてねー。
意味がわからない広告が
また目に入る。
赤いセーターを着て私は揺られる。
少し電車に乗っただけで
大嫌いな広告がよく目に入ってしまう。
昔はこんな広告ばっかりじゃなかったから
好きでも嫌いでもなかったのに
当たり前のことを書く広告や
さっきのような
広告にしなくてもいいような広告が
最近は増えてしまった。
なんでもデザインを作ったり
広告に使う文を考えたりする会社が
急に倒産したんだとか。
全ての広告を一社だけに任せてた
世の中も世の中だけど。
おかしくなった電車の中。
また見てしまった。
君、キーボード打つのおっそいねぇ。
打ちやすいけど試してみる?
下手な手描きのイラストが
よく分からない四角い物体を持って言っている
キーボードの広告。
この電車に乗ってる人も
どこにいる人でも
この広告はおかしくて嫌だと思っていた。
けど誰も止めはしない。
止めたら自分がやらなきゃいけない。
人ってのは面倒くさがりばっかりで
誰も動けない。
行動を起こせない。
私もその中の一人。
さっさと用事を済ませ
コンビニで買ったお茶を飲む。
またあの電車に乗らなきゃいけないのかと思うと
どうしても家に帰る気になれなかった。
"Good Midnight!"
世界なんて狂ったままだと
そのうちみんな狂っていって
狂ってることが普通になっちゃって。
誰も気づけないまま
おかしくなっていっちゃって。

5/7/2025, 2:43:07 PM

ただ何をするにも
気力がまるで湧かなかっただけ。
頭が痛くて顔が火照っていた。
熱があるのかと思って
測ってみても36.6。
関節が痛いから
これから熱が出るのかなーと
今日は何もしないでいた。
そう思ってたけど違った。
気力が湧かなかっただけで
自分が動かなかっただけで、
何も出来ずにいたんだ。
苦しかった。
水を忘れた魚みたいに。
悲しかった。
自分を否定された時みたいに。
ただの風邪じゃないな、と思った頃には
真っ白な靄がかかった
ボールのようなものが
口から出てきた。
ひんやりと冷たくて
滑らかで触り心地がいい。
スクイーズのように柔らかいけど、
ちょっと落としただけで
パリーンっと窓が割れたような
耳の奥を突き刺す音がした。
分かるわけないと思いつつ
ネットで調べてみた。
意外とその真っ白なボールのことは
沢山でてきた。
どうやら真っ白なボールは
雲というようで
割れ切って全部の靄が飛んでいったら
その靄は空に浮かぶあの白い雲になるらしい。
雲はモヤモヤが溜まった時にできるもの、
というのも分かった。
そして割り切るとモヤモヤは
スッキリ消えてるんだとか。
じゃあ空にある雲には
どこかの誰かさんの
モヤモヤが集まってできてるんだと
わかっただけで
頭痛が少し和らいだ気がした。
高い所から落とせば割れるようだけど、
私はなんだかあの音を
もう聞きたくないと思った。
だから調べもせずに飲み込んでみた。
すーっとモヤモヤは
私の中に戻っていった。
今は要らなくて消したいものでも
いつか共存できる日が来るかもしれない。
そんな遠い未来を夢見て…?というか
ただ割れる音を聞きたくなかっただけで!
"Good Midnight!"
モヤモヤを受け止められて
一緒にいられる日が来る時。
その時は多分、
うざいくらい
綺麗な木漏れ日が見えるだろう。

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