少し贅沢しようと
ステーキを買って帰った。
晩御飯まではまだまだ時間がある。
そんな暇な時、
よくお昼ご飯のおかずを
分け合う仲の友達が
面白い夢見た!と
話したそうにしていたので
聞いてみた。
私がタワマンに住み
ローストビーフを分けるという夢を見たらしい。
変な夢で大笑いしてしまった。
その後も雑談したり
おすすめの喫茶店を紹介し合ったりして
あっという間に晩御飯の時間になった。
思い出し笑いが止まらなかったが
ステーキはじっくり味わえた。
肉汁がたまらない。
今日の夢頑張ってもう1回見るわ!と
友達からLINEが来ていて
また笑った。
"Good Midnight!"
今日も明日に向かって歩く、でも
こんな風に笑える今日を
明日までは忘れないでいたいと思った。
3年間、
ずっと続けてきたゲーム。
1年目。
毎日1、2時間以上は当たり前。
ゲーム内通貨を集めるために
自分でルートを考え
時間厳守で動くように。
集めてる時はほぼ作業ゲーなので
慣れると
自分が組んだ時間ピッタリに行動できないと
イライラしたり、
もうおしまいだ…と
通貨集めの中毒者になった。
私は初めましての人には
何故か陽気テンションで
後々人見知りに戻る。
そのゲーム中でも同じように
陽気テンションでフレンドを沢山作っては、
挨拶するだけ、
フレになってから1回も遊ばない、などの
今思うと意味がわからない行動を取ったりした。
2年目。
環境の変化で
組んだ時間とリアルの時間が合わず、
中毒を抜け出し
今度は通貨が足りず貧しく。
いつしかフレンドは
全員挨拶だけか、
遊ばないという
2種類の人しかいなくなった。
かと思われた。
1人だけ
私が1年目の時に
長くゲームをしていなかったフレが
毎日遊んでくれた。
そして3年目。
私はリアルが少し忙しくなり
1週間ほどゲームをしていなかった。
その間にそのフレンドがゲームを辞めた。
ショックだった。
あの時も、その時も
もう少し私が頑張れば
頑張っていれば
もっとフレンドとの交流が出来たかもしれない。
たった1人フレンドがゲームを辞めただけで
他のフレンドにも
申し訳なさが湧き上がってきた。
失ってから気づく大切さ。
そんなの知りたくなかった。
もちろんフレンドが全てじゃない。
通貨集めにも専念出来るかもしれない。
それでも相手は自分と同じ人だ。
距離を置きたかった訳じゃない。
"Good Midnight!"
全てが混ざった気持ちを
ただひとりの君へ。
家に帰ると
犬が恐竜になっていた。
びっくりして
すぐにペットも人も診てもらえる病院に行くと、
あー、進化するまで待ってもらったら
問題ありませんよ。
そんなことを言われ、
意味がわからなかったので詳しく聞くと
ストレスが溜まると
急性退化してしまう犬猫特有の現象らしい。
ストレス源を無くせば
進化しやすいんだとか。
そういえば先々週隣に引っ越してきた人が
毎晩大音量で韓国の音楽を流していて
犬も私も不眠なんだったっけ。
先生は
進化が少し早まる薬を処方してくれると言う。
薬は棚にたくさん入っていて
ほとんど知らないものばかりだった。
進化が早まる薬、退化させる薬、
人の誕生日がわかる薬、失った記憶を戻す薬。
なんだか
手のひらの宇宙という赤ちゃんに
ミルクをあげるお母さんのように見えて
不思議な感じがした。
お礼を言って薬を受け取り
元犬の恐竜に与えた。
そして隣人に恐竜を見せ、
音量に注意してほしいと
3回ほど言いに行った。
睡眠の質は改善され
前よりも活気が出てきた恐竜は
順調に進化して犬に戻った。
"Good Midnight!"
ぐっすり眠れる夜。
嬉しすぎて
犬も私も3秒で入眠。
あー、そうか。
泣いちゃってもいいか。
ただちょっとした事だった。
それが積み重なった。
私の肩を重く苦しめた。
動きやすい服で
家を飛び出して
夜の街を早歩きで歩いた。
誰も見てないから、
ここでは泣いてもいいんだなんて
気づいた途端に涙が溢れた。
風のいたずらで
泣き跡が冷たく乾く。
暖まれる場所を求めて
適当にまた歩き出す。
ふと、
雑貨屋さんを見つけたから
入ってみた。
個性的で不思議な感じがした。
暖まるために入ったのに
中はひんやりしていて肌寒かった。
フクロウに似た店員さんは
チラッと私を見てから
すぐに目線を元に戻してしまった。
まあ、
泣き跡がある少女になんか
関わりたくないよな、と
勝手に納得した。
小さなカフェもあったが
食欲は微塵もなかったので
何も頼まなかった。
というか、
お金を持っていなかった。
家に置きっぱなしだ。
また今度ここにきて
何か買おうと思った。
また来ます。
会釈しながらそう言ってドアに手をかけると、
店員さんは
"Good Midnight!"
と言った。
見た目も言葉もお洒落な人だったなぁ。
いつの間にか嫌な事も忘れて、
泣いていたのに笑っていた。
たまには夜更かしもいいか。
雨が降りそうな曇り夜空に
そう呟いてみた。
死ぬまで終わらない夢に
段々飽きていました。
生きた心地がしないまま
なんとなく生きていて
ふと、
どうでもいいなーと思いまして
海に身を投げたんですよ。
そしたら走馬灯?的な
まだ死んでなくて夢を見てるような
別の意識が生まれちゃいまして。
こんなはずじゃなかったんですけどね。
どうやら寝ている訳でもなく
死んだら終わるかと思うのですが、
この通り死ねなくてですね。
まるで水が入った水槽ですね。
息はできるんですよ。
わ、あんなところに本棚がありますね。
ひぇっ。
見てください。
こんなところに英語の辞書があります。
まさかの生と死の間際でも
勉強させられるんですね。
私は勉強嫌いですよ。
しないですからね!
そんなことを言ってたら
他の本は興味を引くものばかりでした。
教えて欲しそうですね。
いいですよ。
「猫を処方します」、「儚い羊たちの祝宴」、
「雨夜の星たち」、「コハク妖菓子店」。
この4冊気になりますか?
私はこっちの方がいいと思いますけどね。
ほら、1ページ目から面白そうです。
なんて言っていたら
そろそろ死ねそうですね。
私は今までと変わらなさそうです。
下の水色のボタンを押したら
私のことなんてすぐに忘れますよ。
"Good Midnight!"
透明な涙は海に溶けて
私のように
暗く深く見えなくなります。
おやすみなさい。