夜空を越えて
私が世界を修復する
謎の使命を老婆に告げられ
寝落ちして
朝目覚めた。
登りきってない弱々しい太陽の照らす
素焼きレンガ作りの粗末な家だ。
昨日と変わらない
食欲をそそる匂いがする
肉を野菜と煮詰めたスープの香りがする
香辛料の匂い
『私は、生姜が好きでね。つい入れすぎてしまうんじゃがのぉ~冬は、温まるじゃろう』
老婆が鍋と皿を持って話しかけてくる
部屋の中に食卓が現れる
『魔法?!』
私は、ビックリして大きな声を出してしまう
『こんなことは、朝飯前じゃて、フフフ、朝ごはんにしようかの』
老婆は、鍋と皿を置き
食卓に焼きたてのパンが現れる
どういう仕組みなのだろう
生姜のきいた野菜とラクダ肉のスープ、焼きたてのパン
『おかわり自由じゃ、たっぷりお食べ』
いつぶりか分からない、お腹いっぱい食べるこの心地良い感覚
幸せを感じる
夜になったら、旅立つからの
旅の用意をしよう
老婆の後を歩き市場へ行く
この街で他の人間が着ている貫頭衣を買ってもらう
目立たぬよう、着替えて再び、市場へ向かう
向こうでは、この街の布が高価で売れるのじゃ
老婆が次々と何に関連も無いような衣食住の品々を買っていく
最終的に荷車まで買っていた。
ラクダ2頭と。。。
ーこの老婆大金持ち?
という疑問を感じながら帰宅する。
老婆は、家に着くと木の枝を取り出し家の周囲に謎の文字を書き始めた。
何をしてるのかと問うと
『夜を越えるのじゃよ』
そう言ってニヤリと笑った。
ぬくもりの記憶
お母さん
あなたの優しい手をいつも求めてました。
優しい瞳を
その眼差しを
お母さん
でも、与えられることは、無かった。
ーーーーーーーーーー
焚き火の燃えるパチパチと良い音がする。
よく乾燥させた薪を燃やしてるようだ。
目をゆっくりと開けた。
素焼きレンガ作りの粗末な建物に簡単に大ぶりの植物の葉を葺いた屋根。
ゆらゆらと煙がのぼっている。
『起きたのかい?』
老婆の声がする。
声の方を見た。
顔は、よくわからない
焚き火に照らされて影が深い闇を作る
顔の凹凸が大きいのかもしれない
目が落ちくぼみ
骨ばった顔。
痩せた身体を大きな布の服がゆったり包んでる
縫い方の簡単な貫頭衣のようだ。
「ここは、どこですか?」
『お前さんのおった雪原からラクダで約半日くらいのとこさ、アグイダルという街じゃが、知らぬじゃろ?東方から来たお嬢さん』老婆は、笑った。
「私がどこから来たか知ってて助けたんですか?」
『どこへ行くかが重要じゃからねぇ』
「私は、逃げてるだけですよ。」そう年が二十も上の男との望まぬ結婚から逃げた。
敵の部族との和平協定をぶち壊して
兄を殺した部族だ。
仲の良かった兄。
彼以外みんな嫌いだった。
だから、逃げた。
何も先のことを考えず
『私は、お前さんと同じなんじゃよ。』
『私も逃げた。しかし、お前さんは、コレから世界を修復する仕事があるのじゃよ』
『もう少しお眠り、白き都から迎えが来るのじゃ』
『世界の修復のために』
凍える指先
逃げ回って、雪原を走って
走って
どこかに
凍える指を暖める火を求めた。
心も身体も冷え切っている
生命は、死へと傾きかけてる
でも、走るのを止めない
生きることを止めない
雪原の先へ
探せ!!
草の根分けても探し出すのだ。
遠くで怒鳴り声がする。
『まだ遠くには、行って無いだろう』
『いたか?』
枯れた草が2m程度の高さで続く草原を追っ手は、馬で探し回っている
火をかけられたらひとたまりもないが
乾燥した冬枯れの地だ。
どこまで燃え広がるか予想もつかない
だから追っ手は、火を放て無い
ーーーーーーーーー
季節は、冬になった。
追っ手は、振り切ったと思う
雪原がどこまでも続く
たまに雪うさぎやオコジョを見かけて、捕まえては、食べている
この雪の彼方に人の住む国があるはずなのだが
草原を逃げ回った時も
この雪原でも誰にも会ってない
雪原の先へ
安全な未来へ