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6/2/2024, 4:48:09 PM

正直

その昔 正直なお爺さんとお婆さんがおりました。二人は大変正直者で真面目で小働きがよく出来て、そして明るくよく喋りよく眠りよく通る大きな声をしていました。そして清貧であり何故だか村人に疎まれていました。

お爺さんは街に買い出しに行きましたら、道すがらどこぞの娘さんは端なくどこぞの婿殿となかよく話しながら親しげに歩いていたと見たままを正直に帰宅するとお婆さんによく通る声で話しながら荷をおろしているのでした。

お婆さんは次の日川へ洗濯に行き、そこで出会った若奥さんにあの娘さんのことを正直に伝えました。そして「あなた、お気をつけなさいよ」と優しくその若奥さんの背を撫でるのでした。

寝耳に水の若奥さんは疑心暗鬼になり帰宅後直ぐに夫を問い詰め正直にお婆さんから聞いたことを打ち明け泣き腫らした目で夫に詰め寄り夫を責めました。

面食らった夫は、たじろぎましたが事実無根の言いがかりと妻に言いましたが若い妻の嫉妬と疑心暗鬼は収まらず、とうとう妻はその娘さんの家に乗り込んでしまったのでした。

娘さんの父親は、こう言いました。

「嘘でも真でも、こんな噂を流されてお前は傷物にされたのだ、自分の軽率な振る舞いを自省するまで外を歩くな」と言い娘さんを座敷牢に閉じ込めたのです。若い妻は満足した様子で帰って行ました。

娘さんの母親は大層心を痛めましたが、これだけの騒ぎになれば父親の言う通り狭い街には風邪より早く広がります。母親は娘にこう言いました。

「お父さんは、あなたを守ろうとして言ったのです 人の噂も75日暫くお父さんの言う通りにしていなさい」と、けれど娘さんは酷く傷つきました、何故なら彼女はあの旦那さんを好きだったからです、自分心に嘘がつけず仕草表情に正直に出ていたのかと自分を見つめて「しのぶれど 色にでにけり わが恋は ものや思ふと人の問ふまで…」とはこのようなことかと秘めた初恋が正直さに掻き消されたことを嘆き悲しみ床臥しそのまま飲まず食わずの日が続き若い命を散らせてしまわれたのでした。

娘さんの両親は悲しみ
その様子を見ていた街の人たちは、今度は正直なお爺さんお婆さんを私刑の断頭台に上げる裁判を行うのでした。

正直者の集まる街のお話しでした。

2024年6月2日

心幸




6/1/2024, 3:53:33 PM

梅雨

紫陽花が綺麗に咲く季節
シトシトジトジト…感じる空気の重さ
ポツリポツリパラパラ…ふり始めの音
ザァーザァー本降り
ゴーゴーとどしゃ降りの雨の中
雨の音をちょっと考えたら結構思いついた
こと、嬉しいこと

梅雨の朝
体がスッポリ隠れて
傘の下から
長靴が出ているような
そんな頃から

雨の種類も色々あって
雨の音にも色々あって
雨の匂いにも色々あることを
学んだ

紫陽花を濡らす雨は
甘い匂いがして
新田の苗に静かに降る雨は
青い匂いがして
その新田に激しく降る雨は
土の匂いがして
道路に打ちつけ降る雨は
アスファルト匂いと
カエルの生臭い匂いが
するの…

どこからかともなく
カエルの合唱

そんなことを思い出す

梅雨入り前

2024年6月1日

心幸

5/31/2024, 3:13:28 PM

無垢

「無垢」とは垢が無いと書くから手垢に汚れていないということなのだろう。

汚れていないことは幸せなことか?実際無垢なものは己の無垢さに気づかないだろう。

例えば赤ん坊に赤ん坊の真似は出来ないが4歳くらいになれば赤ん坊の真似は出来る。

処女が処女喪失の芝居をしても嘘くさいが
そうでない者がその瞬間を演じる方がリアリティが出るとはとある映画の台詞であるが、汚れを知って初めて無垢とは何かと分かる気がする。

垢にまみれてしまっている方が無垢の意味を知り優しく癒す力を持っているような気がする。


2024年5月31日

心幸

5/30/2024, 3:45:01 PM

終わりなき旅

静かな河を渡る船を待っていた。
長い旅路が待っていた
色んな船がやって来る
豪華客船タイタニックも
カチカチ山の泥の船もだ
どれに乗るかは自由だった
私は選んでその船に乗った
はずだった

その船を漕いで行け
お前の手で漕いで行け
お前が消えて喜ぶものに
お前のオールを任せるな…
そんな歌歌いたい気分

そう思って漕ぎ続けた
タイタニックもカチカチ山の船も
消えたけど
私の船は航海を続けた
嵐もあり日照りもあり
凪もあり朝日と夕日を
幾度も越えて

気づけば、また同じ場所で
船を待っていた
何周目?
2周目終わったかな
だから、今度は3周目
どの船に乗りますか?
そう聞かれて
考えて言ったつもり

ノアの方舟

相変わらず
波乱が好きですね
鬼が笑う
閻魔も笑う
お釈迦様も笑う
遠くであなたの声も聞こえた

準備完了
輪廻転生
終わったら
また始まる
終わりなき旅
私はその船を選んで乗った


2024年5月30日

心幸







5/29/2024, 2:30:03 PM

「ごめんね」

ごめんね青春

1番ごめんねと言ってあげたいのは
まだ何者でもない何者かになりたかった
彼女にです。

いっぱいしくじりました
いっぱい後悔しました
いっぱい傷をつけました
いっぱい嘘もつきました
いっぱい騙されました
いっぱい騙しました
いっぱい泣きました

もう、全て終わってしまえ
そう願った日がありました
悔しくて悔しくて
ただ、泣いていました

ごめんね、あなたの思うような
私にはなれませんでした

けれど、生きてます
生きて来ました
明日も生きるつもりです

ごめんね青春
ごめんねお母さん

せめて、せめて
あなたがくれた
命を、精一杯
生きようと思います

時々笑って
最後に笑って
泣きそうな時は
空を見上げ
悔しい時は
石ころ蹴飛ばしながら

精一杯生きようと
思います

やがて、日が暮れ
あなたの元へ帰れますように
この道が
あなたの元へ続いていますように

ごめんね、お母さん
ごめんね、わたし

それしか、出来なくて

ごめんね

2024年5月29日

心幸


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