今あるものを全部捨てて捨てて捨てちゃえば、あの空はもっともっと輝いて見えるのだろうか。
仕事も他人も今も過去も全て置いてきちゃえば、
あの道ももっと高く高く飛べるのではないか。
夕方、突然彼女から連絡がきた。
「今日の夜星見に行かない?」
_____久しぶりに会った彼女は照れたように笑うと、「行こっか」と呟き僕の手をつかんで走り出した。子供のようにはしゃぐ君をみて、僕も自然と微笑み返す。
坂につくと彼女は急に振り返って、僕と足を並べて歩いた。周りの街灯が消えてきて、月明かりしか見えなくなった頃、僕らは空をみる。夜空を埋め尽くすような星の数に圧倒されそうになり、近くのベンチに腰かけた。「あのね!」そう言って、彼女はひとつの星を指差し、星の説明を始める。
子供のように、星をみて喜ぶ君の姿を
相づちを打ちながら、僕はただただ眺めていた
忘れ物をとりにきた僕は
ドアの前で足を止め秒針の進む音と共に廊下で蹲る
あの夏に咲いた君は
オレンジ色に照らされた教室で1人ただ空を眺めた
「放課後」
目覚まし時計の鳴る音
揺れる白いカーテンと冷たいすきま風
指した日差しに目が眩む。僕は一息吐いてから伸び、下へ降りた。コーヒーを飲んでから僕の朝が始まる。家具の少なくなった僕の部屋。今日は残りの段ボールを運ぶだけだ。ピンポーンとインターホンが鳴る。宅配業者さんだ。続々と荷物が運び出されていき、新居のようになった部屋の壁に触れる。
ふうっと一息吐いて、僕も荷物をまとめて家を出た。ふと振り返ってもいつもの白いカーテンはない。燦々と光る太陽に照らされ、僕は歩きだした。
ねえ、なんで泣くの。ごめんね。ごめんね。
あぁ、一体何回このやり取りをしただろう。
あぁ、一体いつになれば僕は解放されるのか。
彼女の浮気に気が付いてから、言い出すまでに
3ヶ月。別れを切り出すまで2ヶ月。彼女の言い訳を聞くのに1ヶ月。
別れたくないと泣く彼女の涙の理由はなんなのか