桜もとうに散りきって、葉は青々としている。あちこちに春の花が咲いている。
新芽の季節というのにぴったりだ。
河川敷のたんぽぽはすっかり綿毛に変わっている。
昔はよくこれを飛ばしていたものだ。まあ、それも私が小学校低学年くらいの話で、中学校に上がってからはその存在すら気にもとめていなかった気がする。
久々に一本抜いてみた。そして、風を待ってみた。
風は、綿毛をさらって行った。綿毛は風に乗って舞い上がり、青い空に無数の白いパラシュートが浮かんだ。
風に任せて、何処に行くのか。
私に少し教えて欲しい。
写真を撮るのが下手くそだ。
だからといって特に困るようなことはあまりない。せいぜい記念写真がぶれているくらい。
それに、私はあまり写真に興味がなく、触れずに生きてきた。
…のだが。
学校の長い廊下を歩く途中、写真部の展示が並んでいたので、あまり何も考えずに写真を眺めていた。
でもその中の一枚。満開の桜でもなく、鮮やかな色の鶯でもなく。深い青に満ちた夜空が、私の心に突き刺さった。特に星が好きなわけでもなかったのに。明るく輝く星の、瞬きの刹那をきり撮った写真に、私は夢中になってしまった。
結局私は、写真部に入ってしまった。親には怪訝な顔をされたが…。
私も、何かの刹那を切り取って、誰かの心を突き刺してみたい。
たった一瞬の瞬きを、永遠に残したい。
ここ最近、楽しいことが何も無い。
かといって自分から何かをするのは面倒臭いし、何をすればいいかも浮かばない。
ずっとこのまま生きていくのは正直辛いけど、かといって自分の命は捨てたくない。
惰性でスマホを眺めていたら、いつの間にか寝落ちしてしまったらしい。外は薄暗くなっていた。
また今日も何もしないまま終わってしまう。
今から焦り始めても遅い気もするけど。
ぼーっと外を見ていたら、上弦の月が沈みかけているのが見えた。
明日もいつもと同じかな、と思ってカーテンを閉めた。きっと、明日も私は空で輝く月をぼーっと見ることになるだろう。
生きる意味が見つかって、忙しなく過ごし始めたら、きっと月を眺める余裕もない。
…なら、今だけもう少し、眺めておこうかな。
私にとっての正義は、時に誰かの悪となる。そんなことは散々聞いてきたし、わかっているつもりだった。
私は確かに周りの人と比べると、何かと行動は遅いし、よく失敗する。でも、それは私の成長に必要なもので、私にとっては正義だった。
でも、皆にそう受け入れられることじゃなかった。皆が見たら、私はただの駄目人間、つまり悪だ。
そんなことないって言ってくれるのはほんの数人だけ、私の大好きな仲間。
でも、そんないつも明るい君も、みんなのことを考えられる君も、私の大切な君も。
周りから見たらきっと「いい人」なんだろう。
善悪に縛られない方が楽なのに、気にしている私が一番嫌い。私にとっての「正義」も「悪」も、きっと私なんだ。
桜吹雪が綺麗だ。暖かい陽射しが窓から差し込んでくる。こんな日のことを「春爛漫」などと言うのだろう。
桜の植わった並木道。桃色の絨毯の上をゆっくり歩くだけで心が安らぐ、気がする。
いつもは空いている隣町の森林公園の駐車場も、こんな絶好のお花見日和には空きがなくなってしまうと聞いた。桜は毎年咲くのに、これまで多くの人に愛されているのか。少し羨ましい。
毎年冬を乗り越えて咲くのに例え、合格を「サクラサク」なんて言う。今年、咲いたサクラ達が春爛漫の今日、新緑の季節を夢見ているだろう。