206、206、、、
これが、これから会う人の住む部屋番号だったらな
いやまあ今はそこが部屋番号に違いないんだけどさ
新しく建て替えられた大きな病院の中を
心の中でそんなことを呟きながら
スリッパで進んでいく
あ、あった、、
目の前に現れた目的の部屋番号に
誤魔化していたはずの鼓動の速さが襲い掛かる
一度だけ大きく深呼吸をして
大きな扉にコン、コン、とノックをする
返事無くても入ってきていいから、と
LINEで言われていたことを何度も脳内で再生し
失礼しまーす、、、と誰にも聞こえない小さな声で呟き
静かに扉を開けてそろりと部屋の中に入る
四人部屋だが、つい最近もう一人が居なくなって
この大きな部屋を独り占めしているらしい
一番奥のベッドに居る会いたい人へ近づく
すると上半身が起こされたベッドに身体を預けて
窓の外を見ているようだった
「...こんにちは......」
少し掠れてしまった声で呼び掛けると
ゆっくりと顔をこちらへ向けながら
「......会いたかったよ、」と言った
だれとまちがえてる?なんてどうでもよかった
ここで私が正直にならないでどうする
「わたしも、会いたかったです……」
泣きそうになるのを堪えながらそう呟くと
彼は私を手招きして呼び寄せる
それに倣うと頭を撫でられた
「間違ってないからね、俺」
「ちゃんと、会いたかったんだよ」
ここで毎日の日記を書いている方と巡り会ってから
同じように毎日このくらいの時間にここへ訪れて
投稿されていれば、ちょっと楽しみに待ってた、
という心地で読み進めて
今日に一度しか送れない“もっと読みたいです”を贈る
きっと私と同じ人が沢山いると思う
その人のような日記は私にはきっと書けない
自分には無いものを持っていそうだから惹かれる
よくある話
《だから、一人でいたい。》
私は恋愛不適合者だ。
自分のセクシュアリティと向き合った結果、
そう言うのが一番伝わるな、と思った。
その点を踏まえなくても、
私は結婚願望も無いし出産も子育てもしたくない。
だから当たり前のように恋愛の先に
それを描く人間が多い世界では
きっと私は恋愛不適合者。
それに、惚れやすいし冷めやすいし。
理想は高いし、惚れやすいし。チョロいし。
だからかっこいいな、とか良いなって思う人を
そうやって心の中で想いまくるだけでいい。
言葉にも態度にも出さずに、心の中と
自分だけの日記にだけ積もらせていく。
ただ、結婚に関しては
願望は無いけれど
よっぽどの人とめぐり逢えたなら
結婚するのもいいなあ、とは思う。
だれか一人との揺るがない絆。
それはすごく羨ましいと思う。
お母さん、ごめんね。
孫の顔、見せられないや。
誰かに親不孝だと言われても
私は私だけの一度きりの人生を存分に謳歌したいから、
だから、一人でいたい。
嵐が来ようとも
私はいつでも必ず貴方にとっての陽だまりになります
だって私は貴方の陽だまりのような嘘の笑顔が大切だから
それが貴方にとっての偽りであっても
少なくとも私にとっては、私にとっては
その笑顔が事実だから
お祭りといえば地元の花火大会
あれは私が小学生の頃だっただろうか
母と兄と一緒に花火大会に出かけた
それが終わった頃からポツポツと雨が降り出し
あっという間に本降りとなってしまった
持ってきたビニール傘をそれぞれ差して早足で帰っていると
途中で車椅子の方とそれを押す方の二人組が
この雨の中、どうやら傘を持っていないのか
濡れながら進んでいるのが前方に見えた
母が「傘1本あげようか!」
と大きめの声で言ったのが激しく降る雨音の中にやっと聞こえた
私が「そうだね!」と言って
その二人組に追いついたときに
「傘、良かったらどうぞ!私たちは大丈夫なので!」
と差し出すと、
ありがとう、ありがとう、と何度もお礼を伝えられた
少し恥ずかしくなった私は
その二人組に小さく手を振って
また早足で傘を差す母の元へ戻った
聞こえなくなるまで
ありがとう!が聞こえていた