既読がついたままの画面を閉じては開いて
を繰り返していた
ふと雨の音が強くなっていたことに気づいた
最後に送ったメッセージの時刻を見ると
一時間前だった
人生にとっちゃほんの一瞬なのになあ
晴れてほしい時の降りやまない雨も
返信が恋しいときの待ち時間も
永遠みたい
「…今月いっぱいなんですよね?」
「あ、そうですね、はい」
「長いことお疲れ様でした」
「ありがとうございます」
そのあと片手で数えられるくらいの
ありきたりの別れの会話のボールを投げあって
一区切り
「じゃあ、ひとまず今日のお仕事よろしくお願いします。
私はあと帰りますね。」
「はい!…お疲れ様でした」
私からは何も出来ない
近くには誰も居ないけれど
「遠野さん」
呼び止めてほしいと思っていた自分の名前が彼の声としてリアルとなってこの空間に響いてしまった
「ん?」
何も気にしていないと装って振り向く
なんて、未来の自分が【あの頃の私へ。叶いましたよ】ってここにいる私に言いに来てくれ
マッシュヘア
センター分け
高身長
良スタイル
スーツ
革靴
ダボめパーカー
リュックサック
ピアス
腕時計
ブレスレット
どうしても逃れられないのだ……
「僕には何も無いよ」
まるで透明人間だ、と眉を下げて微かに笑った貴方を
気付いたときには抱き寄せていた
「…どうしたんだい」
俺は
この人が選んだ道も選んだ結末も
失った道も人も思いも
押し殺したすべても
この人の色になってると信じたい
幼稚園我「なんか最初から好きだった」
小学生我「かっこいいひと」
中学生我「背が高くてかっこいいひと」
高校生我「かっこいいひと」
社会人我「優しくて面白くて気が合って清潔感があって年相応の身だしなみで身長は自分以上で自分にとって恋愛対象になる見た目で年はなるべく近くて」
本当のことを知らなかった、知らなくてもよかった学生時代の方がよっぽど人を好きになってた
大人の恋愛は“好き”だけじゃない
【理想のあなた】