雪だるま

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12/18/2023, 7:24:57 AM

俺が小学校低学年くらいの時の話。




それまで俺は、文字通り起きている間は一瞬たりともじっとしていないタイプで、真冬に半袖短パンで外に出ても風邪引かないような奴だった。当然、学校を休んだこともなかった。



その日、俺はめったに出さない熱を出して寝込んでいた。
母親が言うには、俺が高熱にも関わらず学校に行こうとするので、引き留めるのに苦労したらしい。が、残念ながら俺は全く記憶に無い。ただ、朦朧とした意識の中で、ずっと鉄のような臭いと味がして不快だったことを覚えている。

午後になり、血の臭いが和らいでいくと、嘘のように身体が軽くなった。熱も下がったので、俺は早速遊びに行こうと思ったが、母にバレて〆られたので、居間で大人しくテレビを見ていた。何を見ていたかは忘れたが、突然、番組がニュースに切り替わった。手持ち無沙汰にしては、そこそこ面白く見ていたのだろう。俺はテレビに向かって文句を吐いた。



テレビ画面には、見慣れたはずの景色が映し出されていた。至るところに赤いペンキのようなものが塗りたくられ、異様にものものしい雰囲気であることを除けば、間違いなく俺の通う小学校だった。

その日、刃物を持った男が小学校に侵入し、校内にいた児童や教職員を次々と切りつけていったのだという。俺のクラスでも多くの死傷者が出た。
もし学校を休んでいなければ、俺も無傷ではいられなかったかもしれない。



その日以来、周囲は事件の話をわざわざ持ち出してきては、とかく運が良かったと言ってくるようになった。俺は……俺の気持ちは。











時がたち、俺は結婚した。その人は、俺のことを運が良かった、とは絶対言わなかったから。


(風邪/とりとめもない話)

12/16/2023, 9:24:18 AM

わざわざ待ちわびるほどじゃないけど、降るとなんかちょっと嬉しい。



(雪を待つ)

12/14/2023, 9:45:49 AM


長い間、私の子ではないと知りつつ、娘に愛を注いできた。



娘がいなくなったとき、私の心は穏やかなままだった。何の感情も湧かなかった。
ただ、動転して狂ったように泣く妻の様子を見て、滑稽だと思った。






(愛を注いで)

12/8/2023, 6:41:42 AM

『いってらっしゃい』

 家の玄関先で見送りをした後は忙しい。朝食の後片付けに始まって、洗濯を回し、その間に食器を洗い、洗濯物をベランダに干し、あとは各部屋の掃除。
 この家は一人で暮らすには大きくて、掃除をして回るだけでも大変だ。各部屋に掃除機と雑巾をかけ、次いで階段の雑巾がけと玄関まわりもほうきで掃く。
 これだけで、正午をとっくに過ぎる。

 天気が良ければ、今日はバルコニーの欄干に布団を干そうかとも思ったが、家の窓から見える外は薄暗い。雨が降っているとやはり洗濯物が気になるので、早めにベランダから取り入れる。
 取り込まれた洗濯物にアイロンをかけ、クローゼットにしまう。休む間もなく夕食の準備だ。

 料理をしていると、だんだん辺りが暗くなり始める。電気をつけたいが、私では手が届かないし、そもそも電池が切れているため家の明かりはつかない。薄暗がりの中で、出来上がった料理をテーブルに運んでいると遠くの方で、ガチャン、と音がした。



「ただいまー。あれ?この子、朝こんなとこにいたっけ?…ま、いっか。手洗ってくるね、そしたら一緒にご飯にしよ!」
動物を模した形の人形を、小さな料理たちが並ぶ食卓に座らせながら、彼女は言った。


彼女の部屋の片隅にあるドールハウス。
箱庭のなかで、今日も人形は忙しそうだ。


(部屋の片隅で)

11/26/2023, 1:38:19 PM

微熱……とは直接関係ないかもしれないけれど。



あれは、忘れもしない。大学2年生のころ。その頃はとにかくメンタル的にキツくて、そこから身体的にも不調が続いて……そう、微熱もかれこれ2週間ほど断続的に続いていたかな。
その日、流石に単位がヤバイと大教室の講義に出た、のは良いけどやっぱり辛くて、途中で静かに廊下に出てしゃがみこんでたのよ。
そしたら、突然聞こえてきたのね。

ドーン

ええ、ええ、大教室のはす向かいのトイレの天井が落ちたのよ、私の目の前で。
もう、私( ゚д゚)ポカーン。←ほんと、この顔だったと思うわ(笑)
だって、目の前でトイレの天井抜けるとか、普通ないでしょ。
慌てて確認してみたけど、天井が謎の水分で腐食していたみたいな感じで、そこそこの大きさのかつて天井だったもの、が床に落ちてて、穴の空いたところからは、建築資材だろうけど、まだ白い粉みたいなのが降り注いでたわ。

この時、個人的には絶対人と関わりたくない感じだったんだけれども、見てしまったからにはそういうわけにもいかないじゃない?こちとらただの学生だし。どうにもできないし。心を決めて(半ば勢いで)行ったわけよ。学生課に。
そしたら、信じてくれないのね、そこの人たち。いやたしかに、講義の時間中に何やってんだ、っていわれたら反論のしようもないわけだけども。
メンタル崩壊しつつ、「いや、来てもらったらわかるんで!」で押し通して、職員さんを現場に連れてったのよ。
そしたら、もうその職員さん絶句。
めっちゃ、教科書通りの絶句。
まさかマジだとは思わなかったみたい。ちょw私が懇切丁寧に説明して差し上げたのにw。完全に学生のイタズラだと思ってたやろこいつw
私「ね。」とか言いつつしばらく二人で突っ立ってた(笑)

結局、5分後くらいに来た最初連れてきた人の上司?みたいな人に簡単な事情聴取?みたいなことされて、(とはいえ、音が聞こえて見に行ったら天井が抜けてたことしか言ってない)最終的に早く講義に戻れと言われて、えー…とか思いつつも戻って(この時はなぜかもう辛くなかったw)友達に心配されつつ講義が終わって、帰るときには無事トイレは閉鎖されてたわ(笑)さながら犯罪の現場みたいだったけど。

結局、天井は直すのに一ヶ月かかった。



まあ、なんだ、なんか辛いことがあっても、それ以上にびっくりすることがあれば、なんか、悩んでたこととか、もうどうでもよくなるよね、って話。←


あ、ちなみに、これ実話ねw


(微熱)

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