背はちょっと高めがいい
笑顔が優しくて、イケメンでなくてフツメンでいい
穏やかな性格で悲しい時は隣で
背中を優しくさすって欲しい
お金は私もそれなりに稼ぐから気にしないで
……って理想高すぎ
ノコリモノノワタシノカナシキ妄言
♯理想のあなた
『私、辞めようと思います』
ぽんとLINEの通知が表示される。
既読がつかないように注意して、通知を長押しして前後のトークを読む。
『この面子、楽しかったけどそれだけじゃダメだなって』
『新しい活動も始めてなかなか時間も取れなくなって』
なんとなく予感はしていた。
最近盛り上がらなくなったグループライン。
三人で頑張ってみようと集まったときは毎日、毎時、毎分…仕事終わりに緑のアイコンの右上が100を超えていた、なんてこともよくあった。
人付き合いの少ない私の心地よい居場所が、少し居づらくなったのはいつだっだろうか。
優柔不断な私はどちらも悪くないよ、とそれぞれの個別ラインに送って、縋りついて。
嘘じゃなかった。本当にどちらも悪くない。
でもずるい私は心のどこかでどちらも悪いとも思ってた。
居心地が悪いのに無くすのが怖かった私の居場所。
バイバイ、ありがとう。
♯別れ
偶然、駅のホームに座る貴方の隣が空いていたから。
私はなんてことない顔をしてその隣に腰を下ろす。
なんてことない顔、できてるだろうか。
自分でも心配になるくらい心臓は早鐘を打って、顔には熱が昇ってくる。
きっと私の名前さえ知らない貴方。
貴方のことなんて、三駅分のことしか知らない私。
それなのに、気になっているなんて感情はとうに超えてしまって。きっとこの隣に座ったことしか残らない、私の恋。
♯恋物語
ガヤガヤとうるさいありふれたスナック。
昔流行った前髪を大きくカールしたストーレトの長い髪型に、まつ毛をばさつかせたママ特製の煮物。
しっかりした味付けの割には優しく、じゃがいもはほろりと口の中で崩れたり。
誰が残って、誰が帰ったかなんてもう分からないだろう3次会になんで自分は残ってしまったのか。
残ってしまった原因が
周りに囃し立てられてマイクを持つ。
軽やかに落ちていく、母親がよく口ずさんでいた曲の前奏。いつも口ずさむ割に、歌詞をちゃんと覚えていないのかAメロだけをひたすら歌うので、そう言えばサビをよく知らない。
当時のトップアイドルの曲をガタイのいい男が心地よく響く低音の声で歌い上げていく。酔っ払った同僚がふざけてその腕に絡む。ふわふわとした巻き髪が相手の肩に落ちるほど、隙間なく身体をくっつける。
ツキリと胸が痛む。
この歌のように、この痛みが懐かしいなんて言える日が私にもいつかくるのだろうか。
適当な濃さに割られて苦いウーロンハイを煽る。
聞き馴染みのないサビは、ガヤガヤとした喧騒に紛れてやがて私の耳には聞こえなくなった。
♯sweet Memories
あの日、ぽっかりと空いた
私の周りの空間
みんなが私を見てる
そして笑ってる
クスクスと
あれから何十年も経って
穴は埋まったのに
どうしてだろう
あの真っ黒な穴が目に焼き付いて離れない
#忘れられない、いつまでも。