NoName

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夏の忘れ物を探しに


ジリジリジリジリと、
高い高い木々の合間から蝉の声
あまりにも大きな音に方向感覚さて奪われそうで

高く括った髪の毛の尾を
可愛らしく揺らす君
お気に入りの赤いリボンにご機嫌で

その尾見たさに数歩遅れて歩く僕へと振り返る
僕たちの背より高い位置にある虫取り網が揺れる

「」

あの時君は、僕に手を差し出しながら
なんて言ったっけ

あの時と違う熱を冷ました風が
僕の頬撫でた

あの頃と同じ到底届かないほど高い林が
オレンジに染まり、カナカナカナと鳴く蝉

今は手にない自分の背丈より小さくなった虫取り網

そして、二度と会えない君

9/1/2025, 10:51:00 AM