【お誕生日】
「よし、準備OK」
部屋をぐるりと見渡す。壁には豪華な装飾、机の上には彼の好きな料理たち。いい匂いを漂わせる料理たちに頬が緩んだ。
今日は彼の誕生日。いつも支えてくれる彼に感謝を伝えたくてこんなに合成にしてしまった。
彼との付き合いは長いけれど、いつもこの時間は緊張してしまう。大丈夫かな、喜んでくれるかな?
その時、玄関の扉が開く音と「ただいまー」という声が聞こえた。私は扉の前に立ち、彼が来るのを待つ。足音がどんどん近くなっていくごとに、私の心音も早くなっていく。
そして、扉が開かれた。
「お誕生日おめでとうー!」
さぁ、あなたにとびっきりの感謝を
【あなたに届けたい】
『罰』
シュルシュルと包帯を巻く音だけが響く。今この部屋にいるのは私と彼の2人だけだった。みんな私たちに気を使って部屋を出ていってしまったけれど、私と彼との間には気まづい空気しか流れない。
そんな沈黙を破ったのは彼だった。
「…ありがとう、包帯を巻いてくれて」
少し俯き気味だった彼がぽつりと呟く。
「…いえ、これが私の仕事ですから」
そう返した私に彼は小さく笑った。
「ふふっ…君は優しいね」
その言葉に包帯を巻く手が止まった。彼が心配そうに私の名前を呼ぶ。
そう、これは優しさなんかじゃない。貴方たちが傷つくのを見てることしか出来なかった、私からのせめてもの贖罪。私には止めることも出来た。だが、それをしなかった私への罰。
「ごめんなさい…ごめんなさい……!」
いきなり泣き出す私に彼は驚きながらも背中を撫でてくれた。
私は優しくなんかない。自分の保身しか考えられない臆病者。
背中にある体温がチクリと心に刺さった。
【優しさ】
【ミッドナイト】
『何も言えない』
「それで聞いてよ〜!またさ〜」
そう言ってストローをクルクル回す彼女。グラスの中で氷が音を立てて一緒に回る。
目の前で楽しそうに喋る彼女は、以前まであった暗い影を潜めていた。「結婚するんだ、」と苦しそうな顔で言ってきた時は、どうやったら彼女を救えるかばかり考えていた。あの彼氏は役に立たないし。もう無理やり割り込むしかないかと言ったら慌てたように「いいよ!いいよ!やめて!」と断られてしまった。そう言われてしまったら何も出来ない。友達の危機に何も出来ないのか…と落ち込んだものだ。
不安な気持ちで迎えた当日、新郎新婦の指輪交換の時に現れた謎の男に彼女は連れ去られた。誘拐…というには少し違く、派手なスポーツカーで去っていったし、なにより素顔も隠していなかった。不安に思っていたが。その後すぐに彼女から、大丈夫ということを聞いた。何でも、その謎の男の仲間になったらしい。1度、その仲間に会ったが皆いい人だったので、安心して彼女を託すことが出来る。
……でも、不安なことが1つ。前より断然彼女の怪我が増えた。その活動上仕方がないとはいえ、やはり大事な友達が傷つくところは見たくない。でも、彼女からあの場所を奪うような真似をしたら、また暗い彼女に戻ってしまうのだろう。あんな彼女はもう見たくない。そう思うと何も言えなかった。
「ねぇねぇ、紹介したい人がいるんだけどさ!」
「えー、誰だろう」
彼女の顔を見ながら、私は無理やり笑った。
【安心と不安】