『いつもの日常』
2人並んでリビングのソファに座る。ご飯もお風呂も終えたので、後は寝るだけだ。
隣にいる彼を見ると本を読んでいる。
「ねぇ」
「ん?どうした?」
本を閉じてこちらに向き直ってくれる彼。彼の顔をまっすぐ見ることができず、立てた両膝に顔を埋めながら口を開く。
「今日本当に何もしなくて良かったの?」
「え?…あぁ、気にしてるのか?」
「気にするよ!だって結婚記念日だよ!?」
そう、今日は私たちの結婚記念日。結婚している友達に聞くと、結婚記念日には豪華なディナーを食べたり、特別な場所に出かけたりしたらしい。なのに今日の私たちは普段と変わらない生活だった。
そのことを伝えると、彼はふっと笑い私の頬を撫でる。彼のまっすぐな目に見つめられ、ドキッと胸が高鳴った。
「俺はそれが良かったんだよ。いつもの時間に起きて、買い物に行って、ご飯を食べて、お風呂に入る。そんな、普段と変わらない生活が良かったんだ」
そう話す彼の顔は優しい。
「結婚記念日だからこそ、この過ごし方が良かったんだ。これからもこんな生活が出来ますようにって。一種の願掛けみたいはものかな」
そっか、と息が漏れた。こんな気を張る必要なかったんだ。安心したら体の力が抜けていく。そのまま彼の肩にもたれかかった。彼も笑って私の肩を抱き寄せる。
「俺と一生一緒に過ごしてくれますか?」
それはプロポーズと同じ言葉だった。今度は彼の瞳をしっかりと見て答える。
「はい、よろこんで」
彼はあの時と同じように嬉しそうに笑ったのを見て、私も同じように笑い返す。いつもより甘い顔をした彼の顔が近づいてくる。私はこの幸せがずっと続きますようにと願いながら、目を閉じた。
【幸せとは】
『新しい世界で』
「あーもう、なんなのよ。こんな朝早く起こして」
ふわぁと大きな欠伸をしながら、ブツブツと文句を言う男に「うるせぇ」と返す。寒そうに身震いする男は首に巻いているマフラーに顔を埋めた。
「何処に向かってるのよ」
「秘密」
男は「はぁ?」と眉をひそめた。
「良いとこ連れてってやるから。黙って着いてこいよ」
男はそれ以上言い返すことはせず、またマフラーに顔を埋めた。
「はぁ!?海!?」
20分ぐらいで着いた場所は海だった。まだ辺りも薄暗いため、誰もいない。波の音だけが響いていた。
「うぉ…!さみぃな…」
「そりゃあね!海だからね!こんな所に来るなんて馬鹿なの!?……あ、馬鹿だったか」
「はぁ!?馬鹿って言うなよ!」
言い返すと、べーっと舌を出される。「こんの…!」と拳を震わせたが、男は気にしてないように海へ目線を向けた。
「で?どうしていきなり海なんか?」
俺はスマホを取り出して時間を確認する。スマホには6時50分と表示されていた。
「もうすぐだ」
「もうすぐって何が…」
そう男が言いかけた時、眩しい程の光が目に入る。男はびっくりしたように手で目を隠したが、次の瞬間にはその光景に目を奪われていた。
日の出だ。水平線から太陽が上り、海と空をオレンジ色に染めている。赤い壁なんてない、それはとても神秘的な光景だった。
「どうだ、綺麗だろ」
「あぁ…」
男は小さな声を零し、白い息を吐き出した。俺は口角を上げ、海へ目線を向けた。隣で流れる雫を見てないフリをして。
【日の出】
推し活ばかりじゃなくて、自分磨きにも力を入れる!!
【今年の抱負】
『幼き日の思い出』
「落ち葉もってきたよー!」
両手に沢山の落ち葉を抱えながら走る子供が1人。その声に反応したように女の子が笑顔で振り返った。
「わたしも!お母さんからお芋貰えたよ!」
女の子の隣にいる男の子も同じように両手いっぱいに芋を抱えていた。
芋を銀紙に包み、おき火状態になった葉の上に入れる。後は焼き上がるのを待つのみだ。
男の子は時々芋をひっくり返していた。焦げがつかないように、らしい。
「まだかな、まだかな〜」
そう楽しそうに待つ女の子の様子を横目でこっそりと盗み見た。
【燃える葉】
『救い』
「あの子を助けに行かなきゃ」
貴方はそう言い、立ち上がる。今まで虚ろだった瞳を嘘のように輝かせて。
そう、貴方が変わったのはあの子が来てから。あの子といる時はいつも幸せそうな顔をしている。前に貴方はあの子のことを「太陽みたい」と言ったよね。なら、貴方は月。あの子がいるから貴方はより一層、輝ける。
でも、でも……
「いかないで……」
どうか、私を見て。私を見捨てないで。
私の明かりを絶やさないで。
【moonlight】(月光)