題:涼やかな音。
チリン……。
涼やかな心地良い音が、部屋に響いた。
あの風鈴は、七夕の際買った物だ。金魚が泳いでいる絵が描かれた風鈴。
金魚達は優雅に泳ぐ。楽しそう。
来年の夏も、この風鈴で過ごそうかな。
お題『風鈴の音』
題:逃避行はほどほどに
ーーなんでこんな人達がいるんだろ。
夜の帳を降ろし始めた窓の外をぼんやり眺めながら、ピーチはそんな事を考えていた。
ピーチは、キノコ王国で一番頭の良い学校に通っていた。しかし、いつの時代にもいじめはある。そのターゲットがピーチであった。
最初は物を隠される程度だった。だが、日に日にエスカレートしていくいじめ。
その内ピーチは『現実逃避』をする様になった。
『現実逃避』といっても、“心だけ”逃避行しているのだ。理解が難しいが……。
〜翌日〜
「なんでまた来るのかしら。馬鹿ね」
ーー今日もか。
ピーチは内心諦めた。
毎日毎日この繰り返し。正直面倒だ。
下校。一人で足早に校舎から去る。と、
「ピーチさん、今日、一緒に帰りません?」
私の隣に来て話しかけてきたのは、学校一の美少女と賞されるーーロゼッタだった。
「え、でも……」
「いいんですいいんです!さ、行きましょ」
ーー……良いのかな……?
「……ピーチさん、逃避行は、ほどほどにしてくださいね」
「!」
意味深な言葉を言ったあと、ロゼッタは話題を変えた。
ーー……バレてたのね。
ロゼッタには敵わない。
お題『心だけ、逃避行』
題:あの日の星の海は
初めてチコと星の海を旅した時、私はママが星の世界にいないと言って泣いた時、自分を犠牲にしてまで慰めてくれたわよね。
あの時の景色は忘れられない。
そう、あの時の景色は……優しくて、とても美しいものだった。
今の私は、もういないママと、ほうき星になった貴方を、愛そうと思うの。
お題『あの日の景色』
題:赤の花火
❁七夕
今日は“七夕”という日らしい。
ハイラルでも七夕には祭りが行われる。
祭りの内容は、主に短冊という紙に願い事を書き、笹という外国の植物にそれをつける。
私は特に願い事は決めてないけど……リンクと屋台回るの楽しみだな。
「お待たせ」
「あ、リンク!」
いつもと変わらない、そんなリンクが私は好き。幼馴染だし。
「じゃあ、行こっか」
「うん!」
リンクと手を繋いで進む。この人混みじゃ迷子になるかもしれないし。それよりも……。
ーーリンクの手、温かいな。
リンクと手を繋いでいられるのが嬉しくて、ついつい手に力が入ってしまう。
「ん、どうしたの?ミファー」
「あ、ううん、何でもないの」
本当のこと、言えないよ。
❁花火
屋台を回りきった私達は、願い事を書きにいった。
「短冊書き終わったら、ここ集合ね」
「うん、分かった」
私達は願い事を書きに、それぞれ別れた。
何書こうかな。事前に決めてれば良かったな。リンクと行けるのが楽しみで考えてなかった。
……誰も見ないだろうし……。
『リンクに“好き”と言えますように』
本音。これは叶えてほしいな。
私は短冊を笹に付けようとして……リンクの名前があることに気付いた。
何て書いたのかな。失礼だけど……ちょっと見ちゃおう。
『ミファーに告白できる勇気をください』
……。
いやちょっとちょっと!?間違いだよね!?念の為もう一回……。いや書いてある!ちょっとこれはオーバーなのでは……?私も似たようなこと書いてるけど!!
手が震えて中々付けられなかったけど、なんとか付けることができた。
集合場所に集まって。
私達は花火を見た。周りに障害物は何も無く、とても綺麗に見えた。
「ねえミファー」
「なあに?」
青色の花火が終わろうとしている。
「俺、ミファーのこと……好きなんだ」
リンクが言い終えたのと赤い花火が上がったのは、同時だった
神様、これは夢ですか?でなければここは天国でしょうか?
リンクと買ったお揃いの青と白のブレスレットが鳴る。
ーー私も、好きだよ。
「……私も、好きだよ」
この告白の時は、花火の時限定でしょうか。
お題『願い事』
題:夏の終わりまで
私は生まれて初めて、恋に堕ちました。
その相手は人気者で、誰にでも優しく、信頼されていました。
何度も告白しようと思いました。でも、勇気が出なかった。
私はよくその人と話していました。話す度、心臓がドキドキと煩くなるのです。
そして、友達から聞いたことなのですが、その人には好きな人がいるのだそうです。
もしかして私かも、という淡い期待もありましたが。
見てしまったのです。
その人は隣にいる美しい金髪の女性と、とても楽しそうに、少し頬を赤く染めて。話していたのです。
私は悟りました。
ーーああ、貴方の好きな人は、その方なのですね……。
胸が締め付けられるようでした。
でも、その人は本気であの方が好きなんだという現実は変わりません。
だから、私は……。
だから私は、その人を諦めました。早くあの方と幸せになれることを願って。
私の初恋は、秋に入る前に、終わりました。
お題『空恋』