誰かの人生を描きたいひと

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9/22/2022, 12:51:55 PM


PASSION ―声が聞こえる―

25時。
 明日に備えて早く寝ないと、と焦れば焦るほど、私の眼は開き、肩は小刻みに震え、寒気が襲ってくる。
 バドミントン部に入ってから、初めての大会。
ずば抜けた反射神経も、強い腕の力も、戦略的にプレーする明晰さも、私は持っていない。
こんなので勝てるだろうか?
 やる前から、分かっている。
 諦めちゃいけない、なんて、勝利を予定されている幸運な誰かの綺麗事に過ぎない。
 私は幸運じゃないから―。
 所詮、平凡な私だから―。

「何言ってんの」
 え?
何か聞こえた。
「絶望だわ。俺の持ち主こんな奴なん?」
 誰?
私の頭の中に響いてくる声。
私、とうとうおかしくなった。
「俺だよ。お前のラケット。」
 …やっぱりおかしくなったようだ。精神科に行ったほうが良いだろうか?
「バカが。俺だって言葉くらい話す。」
 何言ってるの?
「いつもお前の汗まみれの手に握られ、時には体育館の床に削られ、時にはくるくる回され。俺はお前に1日24時間振り回されてるんだよ。そこまでしてお前に尽くしてやってんのによ、なんだよ大会前になってその弱気は。」
 なんだろう。
 目頭が熱くなる―。
「バドミントンってのはな、まあどのスポーツも共通だが、気が大事なんだよ。勝つって信じてる奴が勝つ。負けるって怯えてる奴が負ける。」
 わかってる。わかってる。
 でも、私は弱い。すべてのことにおいて弱い。
「ったく。ふざけんなよ―」
 その声は小さく笑った。
「お前頑張ってただろ」
 頑張ってた……?
「そういうこと言うな。俺がついてる。
 好きなだけ俺を使え。どんなシャトルも受けてや  
 る。気だけは誰にも負けんなよ」
 声は聞こえなくなった。
 気づけば眠っていた。



嘘。
信じられない。
私が優勝なんて―。

9/20/2022, 11:54:15 AM


一分一秒一度きり ―大事にしたい―

朝。もう少し寝てたいな。でも起きないと。…あれっ二度寝してた?ああ遅刻しちゃう。ばたばたばた。

朝はどうしても好きになれない。
今日という果てしなき航海の序盤。
はやく陸地に辿り着きたいのに、まだ始まったばかり。
今朝だって、憂鬱に付き纏われてばかり。離してよ、もう。

憂鬱と一緒に家を出たら、雲が動いていた。
風に助けられてどんどん速く。
何処に行くかも分からないのにね。あんなに意気揚々と、泳いでいるね。
きっと人間もあんな感じ。

涙が出ていた。
しあわせの涙が。
朝はこんなに嫌いなのに。
朝が来ることの喜びを噛み締めて
いつもの朝がすごく大切だって気付いた。

一分一秒一度きりの、私たちの朝。



9/19/2022, 10:47:18 AM

とある誰かの独り言 ―時間よ止まれ―

今の私の気持ちがそのまんまテーマになっている。
明日学校だ…。テストある…。
毎週日曜日(今週月曜日は祝日だけど)っていつもこういう気分…ずっと休みならいいのに。時間よ止まれ。って。
学校、楽しいけど、つかれるんだよね。
新学期になってから、話せる子はできたけど、特に仲良しの子はいないんだ…。
部活でも孤立しがち。
私は独りが好きだから―って思って耐えてるよ。
まあ、私の努力不足だけど。
これから大人になっても、こんな日々なのかな?

そうだとしても、
時間を止めるってことは新しい自分を殺してしまうってこと。
人生は大変なことばっかりだけど、その中に幸せが隠れている。新しい自分を見つけるチャンスがある。
綺麗事にすぎないかもしれない。でも間違ってない。
だから時間は止まらなくていいや。






でも全然テスト勉強してないから、今日だけ時間欲しい。
いや自分で言っといてなんなんだよって感じだけど。

9/18/2022, 2:05:14 PM

midnight 夜景

ひとり。
ひとりで見る夜景は、残酷なミッドナイトブルー。
ツリーに飾られた赤い実が揺れる。
しんしん積もる雪が、どこまでも高く広がる深夜の空から降りてくる。粉雪のひとひらひとひらが、「わたしをみて、わたしをみて」と、か細い声で呟いているのだ。必死に。どうせ、汚れた地面に辿り着いて、この世から消えてしまうのに。
私はそういう、無情な考え方しかできない。
だって私の人生はこんなにも無情だから。

シャンシャンシャン。シャンシャンシャン。
どこかのお店から流れてくる、軽やかなメロディー。小さい頃、よく歌ったクリスマスの歌だ。
毎年やってくるこの季節。すべてが白く、清らかで、柔らかい。
そう、まるでお母さん。私の大好きなお母さん。
もう涙は出ない。だって私がどう足掻いても、お母さんは戻ってこないから。

7年前、二人で見た真っ白な季節。この場所の夜景。
あのときと同じクリスマスツリー。
でも、もう何もかも、あのときとは違うのだ。

私は大きなツリーに背を向けた。
家に帰ろう。帰りたくない家に。
もうここには来ない、たぶん二度と。