『この場所で』
家具や荷物が片付けられ、本来の広さに戻る。
ここで沢山の思い出が作られた。
ご飯食べすぎて気分が悪くなったり、
恋人と一緒に昼寝したり、
やけ酒しようとしたらご飯を床にぶちまけたり...
なんだかんだ酷い思い出も今は
あぁそんなことあったなあと済ませれる。
「荷物は以上でよろしいでしょうか?」
「あぁ、はい。よろしくお願いします。」
かしこまりました!では運びます!
と爽やかな笑顔を残し引っ越し屋さんは
僕の荷物を載せて走り出す。
「じゃ、お世話になりました。」
空っぽになった部屋に一礼して
引越しトラックを追いかける。
語り部シルヴァ
『誰もがみんな』
私が歩けばみんな見てくる。
指をさしてくる人だっている。
みんな私の話をしてる。
私が見ればみんな目を伏せる。
はぁとため息が出る。
教室で自分の机にはいつも通り
黒のマジックでメッセージが書かれている。
"死ね" "ペテン師の子供" "顔見せんな"
ありきたりな言葉が綴られている。
言いたいことなら言えばいいのに。
みんな手を差し伸べない。
私の元に来るのは罵詈雑言たち。
...今日はもう帰ろうかな。
ここで学べることはもう無いらしい。
語り部シルヴァ
『花束』
「ふふ、あなたったらまた花を...」
照れくさそうに笑う君はそう言いながらも
花束を受け取ってくれる。
ここ最近嫁の体調が良くない。
入院という形でなんとか現状維持できているレベルだ。
私が不安なら、当の本人はもっと不安だろう...
だから会いに行ける日は毎回花束を買って嫁にあげている。
病院に怒られない限りは続けるつもりだ。
「これじゃ、お花屋さんを開けますね。」
そう言って今日受け取った花を我が子のように撫でる。
そんな優しい君だからこそ早く良くなって欲しい。
今はそう願うばかりだ。
「実は...あなたにこれをあげたくて。」
そう言って折り紙で色んな種類の花を束にして渡された。
どれも優しく丁寧に折られている。
そんな健気な姿勢に思わず涙が零れてしまった。
語り部シルヴァ
『スマイル』
寝起きに鏡を見る。
まぁー...なんて情けない顔なんだろう。
顔を洗って歯を磨いて少し目を覚ます。
気分がさっぱりして朝の身支度を済ませる。
ご飯を食べて、歯を磨いて...
忘れ物が無いかチェック。
よし、大丈夫そうだ。
あと数分で出勤だ。
部屋を出る前にもう一度鏡を見る。
朝よりかはマシな顔だが、これは社会人の顔じゃない。
軽く深呼吸してして心の中で唱える。
"さあ、仕事の時間だ"
自然と口角がキュッと上がる。
これで大丈夫。じゃ、行ってきます。
語り部シルヴァ
『どこにも書けないこと』
数秒前に投稿した呟きを消す。
思ったことを吐いたがなんだか罪悪感が拭えきれなかった。
最近ストレスが溜まっていると友人に話したところ
「それならSNSに投稿すれば?」
と言われた。
さすがにモラルってもんが...と突っ込む前に遮られ
「鍵垢にして自分しか見れないようにすればいい。
ノートに思ったこと書いてグシャグシャにするのと同じだ。」
とアドバイスを貰った。
ノートに書く方法は昔思いついていたが
ノートが勿体なくて諦めた。
SNSでやってみたが...これまたもしかしたら
誰かが見れてるかもしれないと考えたら呟くに呟けなかった。
...また別の方法を思いつかなければ。
語り部シルヴァ