語り部シルヴァ

Open App
11/12/2025, 10:07:39 AM

『心の迷路』

「あのーすみません。予約していた○○です。」
「本日はお越しいただきありがとうございます。
入る前に事前説明と同意書の記入をお願いしておりますので
待合室にてお待ちください。」

最近話題になっている迷路。
ただの迷路ではなく人によって内容が変わっているらしい。
しかも迷路に入っている間は
何週間何ヶ月と経っている感覚なのに
迷路から出ると入ってから一分と経っていないらしい。

運営側の私達も詳しいことは知らされていない。
事前説明や同意書も迷いに迷って出られなくなっても
自己責任だという確認で、
そこで怖くなってリタイアする人も多い。

ただひとつわかることは、
ここの迷路から無事出られた人は
嘘のように晴れた顔をして出てくる。
だから心の迷路と巷で呼ばれている。

あなたも興味があればぜひお越しください。
きっと晴れやかな気分になることでしょう。
...無事出られたらの話ですが。

語り部シルヴァ

11/11/2025, 10:37:06 AM

『ティーカップ』

休みの朝。
いつもよりかは遅めに起きて朝一にコーヒーを入れる。
棚からティーカップを出して湯を沸かす。
その間に豆を挽く。

普段ならインスタントの粉で済ますけど休みだからこそ
こういう時間がすごく心が穏やかになる。
サーバーにフィルターをセットしてお湯を注ぐ。

ゆっくりとティーカップにコーヒーが満たされていく。
手間隙かけてやっと完成した一杯。

普段使わないティーカップに
普段しない豆挽きから作るコーヒー。
私の休みはこれから始まる。

語り部シルヴァ

11/10/2025, 10:24:25 AM

『寂しくて』

画角良し、加工よし、個人情報がバレそうなの入ってない...
全体的に確認を終えて文章をテキトーに添える。
"今日も肌寒いね"っと。これでよし。

投稿して携帯をいじっているといいねの通知音。
コメントも着いてきた。
自分でも何やってんだかと思いつついいねやコメントが
心の器のような何かに一滴ずつ満たされるような気がした。

"危ないから自撮りやめときなー"
そんなのわかってる。
けれどこれをしていないとどうも落ち着かない...

心の器のような何かを満たされるのがこれしかないから...

語り部シルヴァ

11/9/2025, 10:23:45 AM

『心の境界線』

「お前って人付き合い上手いよな。」
よく言われるが自覚は無い。
というかもう無意識にできるようになったから。
なんて言う方が近いかもしれない。

「わかる。なんて言うか...ここは踏み込まないでってとこは
踏み込まずギリギリ?っていうのか?
ほんと自分がここまでならセーフってとこまで
踏みとどまってくれるよな。」

「「「たしかに。」」」
急に褒められて少し恥ずかしくなる。
みんなの言うことは正しい。

何せ...ほんとに見えるから。心の境界線。
話をしていくとセーフティーゾーンから
アウトゾーンに近づくサインが出てくるから
それを見て回避してるだけ。

それがわかるだけで仲良くできるってのは不思議だ...

語り部シルヴァ

11/8/2025, 10:19:48 AM

『透明な羽』

不思議な子だった。
目立たないようにしている佇まいなのに
誰しもが見入ってしまっている。
ただ声をかけようにも飛び去っていく。

周りはどんどん諦めていく中私だけは
逃げられても声をかけて行く日々だ。
そうして私は声をかけるのを諦めた。
ただ他と違って見守るだけにした。

最初は他と同じで声をかけて私のものにしたかった。
けど今は違う。その子をただ見ていたい。
透き通るような宝玉を割れないように遠くから見守るように。

その子は声をかける前より魅力的になった気がした。

語り部シルヴァ

Next