語り部シルヴァ

Open App
11/2/2025, 10:23:07 AM

『秘密の標本』

出来心だった。
完璧と言われるあのお嬢様の意外な一面を見てみたかった。
身寄りのない私を雇ってくれたお嬢様は何もかも完璧だった。
恐ろしいくらいに短所が無かった。

だからこそ意外な一面があればそれを知りたかった。
そんな思いで掃除といいながらあちこちを漁ってしまった。
ある日、ついに隠し扉のボタンを見つけて押してしまった。
普段は気づかないようなボタンは押すと
壁が人一人分通れるほどの道を隠していた。

静かにこっそりと歩く。
細く暗い道を、闇に飲まれそうな深さの螺旋階段を...

そしてひとつの扉が前にあった。
これを開ければ...恐る恐るドアノブに手を伸ばし
ゆっくりとひねる。

中には美しくも恐ろしく感じる標本が並べられていた。
昆虫に鳥、犬...そして人間も。
これ以上はまずい。
そう思い振り返るとお嬢様が満面の笑みで
両手で持つほどのハンマーを持っていた。

「あなたも綺麗に飾ってあげる。」
そう言って私にハンマーを振りかざした。

語り部シルヴァ

11/1/2025, 10:24:17 AM

『凍える朝』

カーテンが輝いてる気がして目が覚める。
真っ暗な部屋なはずなのに目を凝らさなくてもよく見える。
異様に寒い。昨日は日中汗をか程度の温かさはあったはず...

足先が冷えてる。
寒い。もう秋の終わりの兆しが見えてきたかもしれない。
冬用の布団を用意しなきゃ...

顔を洗う水も氷のような冷たさでより目が冴える。
早くココアでも飲んで体を温めよう。

今年も冷える時期がやってきた。
それは同時に今年の終わりを知らせるようなもんだ。

少し寂しく感じる...寒いせいだろうな。

語り部シルヴァ

10/31/2025, 10:11:08 AM

『光と影』

歩けばみんなに声をかけられ、
助けを求められれば全てをそつ無くこなし、
関わる人達の信頼は並以上。
妬むものはいるけれど、
そんな人とも仲良くしようとするもんだから
陰口を言う人は少ない。
まるで勇者みたいだ。

中学は気が合う友人として共に過ごして来たが
高校に入った途端激変した。
二人で話す暇なんて無くて君は申し訳なさそうに席を外す。
断るのが苦手な君はこれからも輝き続けるだろう。
けれど休みだけはどれだけ連絡が来ても
君はスマホを見ず同じ時間を一緒に過ごしてくれる。

「いつもごめんね。こんな時間しか合わせれなくて...」
「高校になったわけだし、
無理して合わせなくてもいいのに。」
申し訳なさそうに言う君に答えると
君はムッとした顔で「僕は君との時間が欲しいんだよ。」
なんて言うから影みたいな私を?
と笑いながら聞くと
「影がそばにいてくれないと光は輝けないんだよ。」
と顔を寄せて答える。その目に嘘は無いようだ。

君と私が別の性別ならこの先に進めたのかな。

語り部シルヴァ

10/30/2025, 10:28:09 AM

『そして、』

辺りが連鎖的に爆発を起こす。
ここまで来れたのも奇跡だろう。
俺たちのボスがやられてしまった。
そのせいかアジトが自爆システムが作動し始めた。

準備段階の時点で爆発が始まってる。
カウントがゼロになったら…生きては帰れないだろう。
俺は一番最後に少しでも爆発を抑えるため
全員が避難したエリアを閉めていく。

全員無事に帰れそうだ。
最後の扉をロックしようとした時隊員のひとりが声をあげる。
「扉のシステムが爆破により下がりません!」
衝撃か反動か...いやそんなことはどうでもいい。
ここの扉を閉めない限り全員無事では済まないかもしれない。

だとすれば、やることはひとつ。
「みんなは下がってろ。」
扉のサイズに似た破片を何重にも重ねる。
「ここで俺が少しでも抑えている。
少しでも早く遠くに逃げるんだ!」

たじろぐ隊員たちに怒鳴る。
「早く逃げろ!」
葛藤しながらも隊員たちは走り出す。

そろそろか...隊員たちの顔がよぎる。
みんな今までありがとう。そして...

カウントがゼロになった。

語り部シルヴァ

10/29/2025, 11:08:14 AM

『tiny love』

ベッドから吊るされたオルゴールメリーが
優しいメロディを奏でてゆっくり回る。
それを見ながらずっと微笑む。

可愛い。こんな天使が我が子なんて...
そう思いながら洗濯物をたたみながら子を見守る。
あ、今度は動くおもちゃを掴もうと
手足をゆっくり伸ばしている。
ずっと見守りたいくらい可愛い。

優しい日光が部屋を照らして部屋が暖かくなる。
どんどん心地いい温度になっていくのか
動いていた手足はゆっくりと降ろし動かなくなった。

はだけた布団を直して、
天使の寝顔を確認する。
本当に可愛いなあ。
オルゴールメリーを止めて、また見守る。

優しい温もりに包まれた部屋に私も眠気を誘われた。

語り部シルヴァ

Next