『無人島に行くならば』
"無人島に行くならば何を持っていく?"
似たような質問をどこかで聞いた事がある気がする。
だいたいの人は水だったりナイフだったり
日常的に必須な物をひとつ選ぶだろう。
僕ならなんて答えるかな...
色々あって迷ってしまう。
そうだな...僕もサバイバルナイフとかがいいかな。
なんで今思い出したんだろう。
目が覚めて一番最初に思ったことがこれだ。
漣の音、白い砂浜、知らない植物の山。
漂着してしまったようだ。
サバイバルナイフ...欲しかったなあ。
現実は残酷で何も持たないまま無人島サバイバルが始まった。
語り部シルヴァ
『秋風🍂』
「さむっ」
急に吹き出す風がやたらと冷える。
少し前まで風よ吹けと願っていたのに
今じゃ止んでくれと願うばかり...
色褪せた枯葉が風に吹かれて乾いた音で地面を走る。
つま先から芯まで一気に冷やされるような風は
冬服の温かさを想起させる。
あー...あったかいココアが飲みたい。
そんなこと思いながら歩いていると自販機を見つけた。
持ち合わせがちょうどあったからココアを買う。
プルタブを開けた瞬間優しい甘さが鼻に届く。
早速一口...
じんわり体に広がる温もりを秋風が冷まして
またココアを飲む...
帰るまでにココアが無くなりそうだ。
ココアで暖を取りながら歩く。
枯葉が一枚、また一枚と秋風に吹かれながら
地面を走って僕を追い抜いた。
語り部シルヴァ
『予感』
"話したいことがあるんだけど"
ニコニコしていた口角が下がっていく。
さっきまで胸らへんにあった暖かった感覚が一気に冷める。
今の時期のように熱が奪われていく気がした。
嫌な予感しかしない。
少し震える手で一文字一文字打ち込む。
"どうしたの?"
そう返信すると既読が付きすぐに通話画面へと切り替わる。
心臓が跳ねる。深呼吸を2、3回ほどして電話に出る。
「も、もしもし...?」
君の話を聞いてまた温度が逆転したのは別の話。
語り部シルヴァ
『friends』
自慢じゃないが私には最高の友達がいる。
ゆうたろうは図体が大きいけど心優しい。
えんすけは足が早い人気者。
みやこは美人でみんな見惚れる。
みんな個性があってみんな大好きだ。
みんな優しくてみんなあたたかい。
みんなとずっと一緒に生きていきたい。
みんなを抱きしめる。
みんな逃げずに私のわがままを受け入れてくれる。
今日も一緒に部屋で日向ぼっこ。
明日も一緒。ずっと一緒。
語り部シルヴァ
『君が紡ぐ歌』
「〜♩」
情に訴えかける歌詞、
それに感情をさらに上乗せするような静かで熱の篭った声。
前よりもファンが増えたのか
アップロードされたばっかりなのにコメントや
高評価数が増えてるような気がする。
順調そうだ。
だが予想通りコメント欄には
"〇〇じゃない気がする。"といくつか書かれている。
こういう時の勘が鋭い人は恐ろしい。
君は大丈夫だろうか。
音楽活動家だった兄を失い、
兄の名を名乗って意志を引き継ぐと決意していた君。
君の決意は歌となって世界に広がっていく。
きっと...いつかは君の歌となるだろうけど、
それが君が紡ぐ歌なんだ。
語り部シルヴァ